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Side W ※

Side W   「はぁッ、んふ、ンんッ」  細い腰の皮膚の下、オレのが入っているのかと思うとじわっと目玉が熱くなった。チョコレートみたいな味すんじゃねぇのって何度も思って何度も舐めて何度もチョコレートの味なんてしねぇのにチョコレートの味なんてどうでもよくなってよく分からないぶわわわってものが腰の奥辺りから込み上げてくる。 「はぁ、あっ」 「―っ」  オレを締め付けて、オレの手に手を重ねてきて、放してほしいって感じに軽く引っ掻いてくるのが心臓に悪くて放せない。 「も、ダメ、ぃやっ、ぁ…!」  まだ要領掴み切れてない男同士のセックスも、いいものなんだって多分これきりだと思うけど、思った。一カ所すごい絡み付いて放さなくなるところあって、ここがいいの?って訊くとこくこく何度も頷いてきて、なんでオレはコイツとひとつになりきれないんだろうって意味分からない思考になってくる。オレはコイツをどうしたいんだろう、コイツになりたいのかも知れないし、同時にコイツにだけは絶対になりたくなくてコイツとは違う生き物のままコイツをずっと喘がせてたいとも思っちゃってこれが付き合うってことならオレ多分誰とも付き合ったことないかもしれないわ。 「んぁ、い、や、いやぁッ」  どういうイヤ?って耳元で囁いたらびくびくって背筋が揺れて腹の辺りがぬめって、コイツの茶色の肌が白く汚れてた。 「ぃや、じゃない、です、んんッ」  まだびくびく腰が揺れてて肩が大きく揺れながら息してて濡れてるコイツの目がもうオレをダメにする。オレこんなだった?これが付き合うってことなら、オレはマジで童貞。 「胸、いい?」  呼吸のたびに上下する胸の先端に指を這わせて、ここもイイんだなってオレもよく分からなかったけどコイツだけなのかな。返事なんてそもそも待ってなくて、腰打ち付けながら胸いじってたらまたオレの耳溶かすみたいな声出して。 「ああっ、あ、ああッ」 「も、中、出す、よ?」  切なくコイツの顔が歪んで、嫌なんだろうなってのはなんとなく思ったけどだからこそ中に出す意味がある。コイツは好きな人がいて、それでオレと付き合ってるんだから。 「な、か…ッあぁっ」  唇ふさいで舌を絡める。吐息の中に声が漏れて、オレはコイツの中を抉る。同時にイッたみたいでコイツの身体は何度も引き攣って中も何度もオレを締め付けて、オレは奥にぶちまける。脈打ちながらそれを感じるのか声が混じった息を吐いていて、もう一回キスしたいと思ったらコイツの目からぼろって涙零れてて、コイツまじで何してんの?って思った。コイツの好きなやつ、どうしてコイツのこと奪いに来ないの?って。大切にしたいキスまでしてる仲なんだろ?片想いじゃ、ないんだろ?  不毛だわ。付き合うってこういうことなんだっけ?打ち上げ花火みたい。さっきの妙な感動ってなんだったんだろ。やっぱ男はサルか。本能に逆らえない。オレだけ?セックスがヨければいいのか。ロマンねぇな。満たされない。オレはコイツに触れるけど、コイツはそういう意味合いでオレには触れないもんな。それは仕方ないか、コイツ好きなやついるんだもんな。だせぇ白馬の王子様が。冷生チャンの大変ですね、って言葉がいきなり頭の中で流れて、その時向けられた同情みたいな目もすっげぇうざってぇ。どういうつもりだったんだよ。友達でいるのしんどいっていったってよ。僕が抱いてるのは恋愛感情っていったってよ。あれオレ結構冷生チャンのマネ上手いかもよ。先輩を選んだ理由うんたらかんたらとも言ってたな。オレを選んだ理由ね。オレが選ばれた理由。学校の宿題より難しいわ。答えくれよ。モハンカイトウってやつ。消去法だろ、多分。オレがオレとして選ばれたワケじゃ、ないんだろうな。コイツの中の妥協ってだけで。  オレのベッドで寝息立ててるソイツを見た。胸がきゅんって絞られたみたいになる。心臓病かな。小松に訊いてみっかって思って、あいつはあいつで今大変なんだよな。どうしたもんかね。床にべたって座って、ベッドに寄りかかる。よくもまぁ、妥協とはいえオレを選んだわ、でも。泣いて嫌がってアレコレ付き合うってなってからは、迷惑掛けませんからとか頑張りますからって積極的で今日もアイツのいきなりの慣らさずの騎乗位からおっぱじまったワケだが。さすがに慣らしたけど。でもコイツは事後に泣くし、たまにぼ~っとしちゃってるし無意識なのかオレのこと拒否ってることあるし。分かってるわ。気付いてるわ。でもオレやさし~から言わない。気付かないフリするけど、嫌なんだろ。好きなやついるんだもんな。それで相手も多分お前のこと好きなんだろ、多分だけど。それならどうして付き合うなんて言ったんだよ。なんで別れてって言わないんだよ。何したいんだよ。どうしたいんだ。 「観月…先輩?」  寝ボケた声。何だよって返事して、いつもはデカい目が細められてて、キスしたくなったけどやめた。コイツは他に好きなやつがいる。冷生チャンの大変ですね、って声と顔が呪いみたいだ。 「ごめ、なさ…ベッド…」 「いいよ、気にすんな。寝てろ。後で送るから」  またゆっくりでっかい目が閉じられていく。寝ちまえ。せめて夢の中では好きやつに抱かれてろよ、やってらんね。 「いえ、ありがとうございます。1人で、帰れますから」  それから数分も経たずに起き上がって、割りとはっきりした声でそう言うもんだから、ほんとに大丈夫かよとは思いながらも、コイツにとっては付き合うっていってもオレ利用してるだけだもんなって分かって、やっぱり冷生チャンの言葉が頭から離れない。それともこれが付き合うってことのなのか?なぁ、冷生チャン、どういうつもりで言ったのさ。ねぇ小松、付き合うってこういうことなの?

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