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Side T

Side T  重恋くんと鷲宮先輩別れたって話、まさか鷲宮先輩から言ってくるとはね。何かの義理立てかな。義理立て?何のさ。同情とか?予想外に短くて、でもカップルとかってそういうもの?今この瞬間、全国で何組ものカップルが破局してんの?だとしたら交際とかやってられないわ。また余計なこと考えてたら先生とばっちり目が合って、教科書読むよう指示された。教科書体、結構見ていて面白いからいいんだけどさ。  数学の授業も結局ぼ~っとして隣の子に声掛けられて、問題分からないって言われたから解法教えてたら先生がニヤニヤしながらお前解いてみろってチョークを差し出される。それを受け取って隣の子に教えた通りの解法で式を書き連ねていくと、よくノーヒントで解けたなって言われて笑って返す。流れ作業みたいだ。全て全て。でも高校生活なんてそれでいいんだよね。思考停止させておけば、それで。  ガラガラガラって静かで平和で能天気な授業中の空間を破るみたいな味気ない扉の音。何、不審者?って疑問はすぐに払拭されたけど、それでも教室はざわついた。ここに用はないはずだし、今ここにいていい人じゃない。何かあるなって思ったし、何よりいつもと纏う雰囲気が違いすぎて、でもいつもってなんだっけって頭は違うこと考えはじめてる。  先生が出て行け!って怒鳴って、でもその人は先生の怒号もざわめきも気にせずにずかずか教室入ってきてそういえば昨年このクラスだったって言ってたな、なんて僕はただ事の成り行きを見ているだけ。 「来いよ」  その人が彼に触れてやっと思考の金縛りが解けた。

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