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Side T
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言ったんだな、っていうのは教室戻ってきた重恋くんの様子を見て分かった。重恋くんの“友達として”僕は鷲宮先輩を止めるべきだったのかな、って思わなくもない。僕と先輩は違う選択をした。だから止められないなって思った。相容れないから多分。
帰宅すると姉貴がいた。珍しいなって思った。あまり帰って来ないから。僕を見るなり、いつもはおかえり!ってうるさいくらい纏わりついてくるのに、今日はワンテンポもツーテンポも遅れて、おかえりって言った。眼球だけが僕を捕らえて、いつもはもっと体全体でしつこいくらいなのに。
冷ちゃん、っていつもの呼ばれ方で呼ばれて自室に向かう足を止めればやっぱ何でもないって言われて、何それって感じ。姉貴は知らない…と思う。話されていなければ。1人の男巡って殴り合いになったって話は。殴り合いになったのは知ってるし、脅迫紛いに婚約迫ったのも。相手方の母親も快諾らしい。未成年との結婚は保護者の同意必要だしね。まだ18歳じゃないみたいだけど。それで染サンが母子家庭だと知ったのは割と最近。退学、か。退学…。姉貴には退学だろうが何だろうが関係はないんだろうな。養う気満々みたいだし。
ねぇ冷ちゃん。姉貴がまた僕を呼ぶ。ほんとに何?メンヘラってるの?さっさと言ってくれないかな。やっぱり言っておいた方がいいと思ってって、妙な前置きだな。知ってるよ、分かってるって、染サンは婿入りなんでしょ。それで要するにヒモにするんでしょ。それでこの家で暮らすかもしれないんでしょ、兄さんの部屋片付けて。姉貴はシュミが悪い。分かってる。大丈夫。まだ受け入れきれてないけど、慣れていくって。
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