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Side W

Side W  ぴっちぴっちちゃっぷちゃっぷ…雨の歌を口ずさむ。最近ニュースになってるけどそのうち歌ちょっと歌うのにも金かかる日が来るとか来ないとか。ま、誰も聞いてちゃいねぇだろ。窓を閉める。ベランダに出られる状況じゃない。誰かが窓に吊るしたてるてる坊主が揺れた。可愛いね。でも首吊りにしか見えねぇよ。だから取っておくわ。別にカビンになる必要はないわな。まぁ、でも人にはジジョーがあるからよ、外すな?笑いかけてくるてるてる坊主がオレの手の中でもずっと笑ってる。電気つけるの好きじゃねぇから暗い部屋ン中で一瞬外が光った。音はない。カミナリか。窓ガラスを叩く雨と風。こういう天気は好きなんだよな。ベランダに出られないのはちょっとあれだけど。また外が一瞬光って、てるてる坊主がオレの手の中で笑ってる。  笑ってる姿が見たいとか、オレもロマンチストかな。ウサギ抱き上げてすっげぇ大事そうに抱き締めるの。あれをさ、オレに向けろよ。ムリかな。オレ、ウサギじゃないし。  多目的室に誰か入ってきた。オレがどっか行った方がいいのかな。てるてる坊主、どうしよ。ティッシュで作られてるからごわごわしてる。 「鷲宮先輩?」  甘ったるい声。耳とけそう。そしたらウサ耳、生えてこねぇかな?は?っていうか朝比奈?本物?もーそー? 「お話、いいですか」  ホン、モノ、なんだよな。オレのこと怖いみたいで、なんかびくびくしてる。 「お、おう」  オレはできるだけ優しそうな声を出す。コイツからオレのところ来んの?まじ? 「すみ、ません」  頭を下げてオレの方へゆっくり近寄ってくる。抱き、しめたい。 「きちんと謝っておこうと思って」  謝る?何を?フッてごめんて?さすがにそれは爆笑モンよ。 「好きな人がいるのに、付き合ってほしいとか言って、利用してたこと、本当にごめんなさい」 「それ、お前があやまることじゃねぇよ?」  朝比奈があやまることじゃないんだよな。その前まで平気で利用してたのはオレだし。オレはコイツのことを人形みたいにしたし、コイツの気持ちも知らないで。 「で、もおれ、鷲宮先輩のこと、考えなくて…」 「それはおれもだから。お前のこと考えてなかった。だからあやまるなよ。それでも自分が悪いっていうならお互い様だ、オレもあやまる」  あやまるのが苦手だったオレにこういうのを教えてくれたのは誰だったっけな。もう会わないかな?いや会うだろ。時間がカイケツしてくれるんじゃねぇのかな。 「すみ、ません…」 「それよりもよ」  そうなんだよな、オレにとってイシキしてほしいのは、そこじゃないんだよな。 「オレの告白、あれ冗談とかじゃねぇから」  あああああキスしてぇ。でももう勝手にキスするとかできるアイダガラじゃねぇから。 「え」 「うん、まぁ答えは分かってるから。でもジョーダンですまされるのはキツかったからさ」  困らせっかな。でっかい目をきょろきょろさせてて、そういうところもさ、なんかオレをダメにするんだよ。 「告白を拒否されるのって、やっぱつらいですよね」  そういえば冷生チャン、小松と会わせるとか言ってたな。 「キョヒられたのか」 「えぇ、まぁ。でも告白できました」  フラれちゃったんですけど、ってコイツは言って、オレは黙ってしまった。あの流れならフラれてもフシギじゃねぇけど。 「そうか」  小松がねぇ。小松が。フッたのか、コイツのこと。来る者みんなウェルカムな小松がね。それとも恋愛に関してはそうじゃないとか?サンプルが少なすぎて分からんわ。 「もう取り返しつかないくらい、嫌われちゃったみたいで」  どうかなぁ。小松がお前をきらってたとしたら、それはそれで特別ってことにはなるかもな。そんなのはコイツとしては望んでねぇか。 「すみません、こんな話」 「いいよ。お前から聞けるなら、何でも」  ただでさえデッカい目をカッて開いて、目が合ったらさってそらされて、かわいいな。そういう反応、期待するからやめろよな。 「あり、がとうございます…」  困るよな。変なこと言ってごめんな。でもお前には思ったこと言いてぇんだわ。 「お前とまた話せてよかった」  小松殴った時、もうダメと思った。小松と冷生チャンと話せてもお前とはもう分かり合えないと思った。ガチ告白スルーされたのも、仕方ねぇのかなって。ガチ告白童貞捨てたのに。オレは冷生チャンみたいには、きっとなれない。 「変な期待はしない。重いものも求めないから。またオレと会ってくれないか。話してくれよ。好きなやつ、またデキたら応援させてくれ。どんなつまらないことでもいいから、オレに話せよ」  お前と離れたくないんだよ。音立てるみたいにぱちぱちマツゲが動いて、オレ、ドン引きされた? 「きらいにならないで、ほしい」  もうかっこ悪ぃこと言うなよ、オレ。

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