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第12話
「元気がいいんだね、」
コウジの成長を微笑ましく思う健次。
「コウジ、『3歳です』でしょ」
ユカリ先生は柔らかく間違いを正す。
「はい、ごめんなさい」
幼いながらもきちんと理解して謝るコウジ。
「ちゃんと謝れるんだ、偉いね。しかし…しっかりしてますね。それに目元、口元、ユカリ先生にそっくりですね」
コウジを褒めたあと、母親のユカリ先生へ話し掛ける。
ユカリは嬉しそうに、そして自慢気に…
「有難う、私の子ですからね。あの人に似なくて良かったわ…」
本心なのか平然と言うユカリ先生。
「はは…」
相変わらずすごい夫婦だ。
兄夫婦の間に愛情はない、ただお互いに医師としての実力は認めているようだけど…
から笑いする健次に…
「健次先生、これから少し時間ありますか?」
「えっ、まぁ少しくらいなら…」
「じゃ、少しの間、コウジをみていただけます?病棟に用事があるので…」
「あぁ、いいですよ。コウジ君、おいで」
優しく了解してコウジを呼ぶ健次。
「10分で戻ります、お願いしますね。コウジ、大人しくしてるのよ」
ユカリ先生はそう言い残して去ってしまう。
「はい。あ、」
すっかりアキラの事を聞きそびれてしまう健次。
「おぼっちゃんって感じだなー、こいつが次期院長サマになるんだな」
後ろで話しを聞いていた亜澄が話し掛けてくる。
「そうだね…」
この子もすでに、人生のレールが敷かれている。
「そん時まで俺ら現役でいれるかどーか微妙だよな」
冗談ぽく言う亜澄。
「はは…おそろしい」
健次は微笑してコウジを椅子の方へ連れていく…
「じゃ、そろそろ俺は帰るからな、またな健次、ボーズもバイバイ~」
亜澄は軽く言って手を振る。
「ありがとう…またな亜澄」
「さようなら」
健次とコウジは亜澄に答えて見送る。
「座って待とうかな」
そしてコウジに話しかける健次…
「うん」
頷くコウジ。
一緒に座ってしばらく、話し掛けてみる。
コウジは愛想良く、人見知りをすることもなく、はきはき質問に答えてくれる。
そして、気になっていた事も聞いてしまう。
「じゃ、アキラは元気にしてるかな?」
一緒に住んでいる筈のアキラの存在を…
しかし、コウジは首を傾げて…
「アキラ?」
「そう、アキラ。君のお兄さんだよ。年はそう変わらないけど…」
もう一度、聞いてみるが、コウジは困ったように…
「アキラ…知らない…」
本当に存在を知らないのか…首を傾げている。
「えっ…」
同じ家に居る筈なのに…年の近い兄弟、遊ばない筈はないだろう。
何故?と健次は驚く…
「本当に、知らない?」
信じられなくてもう一度聞く健次…
「うん」
純粋に頷くコウジ…
「……」
どういう事だろう、退院している筈なのに…また入院したんだろうか?
心配になってくる…
どうしてもアキラの所在が知りたくなり、戻って来たユカリ先生に一番に聞く健次。
「あの、ユカリ先生、アキラは…今、どうしていますか?」
会えなかった数年間の成長過程が知りたい…
アキラの…
「アキラ?…あぁ、あの子供?」
一瞬、誰?というような顔をするユカリ先生。
「あの子供って…」
血は繋がらないにしろ、仮にも息子にあたる子を…
そんな突き放した言い方…
眉間にシワを寄せる健次。
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