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第13話
「どうかしらね…自宅の3階にいるけど…すべて家政婦に任せてあるから、何も聞かないし問題ないみたいだから、大丈夫でしょう」
軽く首を傾げながら、ユカリは当然の如くそう教える。
「どういう事ですか?アキラの成長が知りたいんです。身長や体重は?」
理解出来ず聞いてしまう。
「私に聞かれても…一度しかあの子供を見ていないし、それも退院してきた日に…家政婦の方に聞いて頂ければ分かると思いますが…」
そのユカリの言葉に驚き、凍りつく…
同じ家に暮らしながら、子供を一度しか見ていない…
「な、何故?アキラだって、あなたの息子なんですよ?」
「戸籍上は、ね。こんな事を言うのはいけませんが…でも、どうしても私は血の繋がらないあの子供を…自分の息子として見れないんです。私にはこの子がいますから…」
ユカリ先生はコウジを抱き寄せながら…冷静に本心を伝える。
自分の息子は一人だけ…と。
「そんな…でも、あの子にとって母親はあなたしか…なんとか平等に…」
「ごめんなさいね、無理なものは無理です。あと、私は…あの子供の目が嫌いだから…」
印象的な深い緑色の瞳…、満と同じ…
「……」
健次は、それ以上…言葉が出なかった。
「じゃぁ、失礼します…また会いましょう」
頭を下げ、コウジにもさよならを言わせながら…去っていくユカリ先生。
「……」
家庭からカヤの外…
そんなアキラの現状を知った健次は、居てもたってもいられず。
休みをもらい、アキラに直接会いにいく…。
兄の家は三階建て、その一番上の階にアキラがいる。
家に入るとすぐさま家政婦が出迎えてくる。
アキラの部屋まで行く間、様子を聞いてみると…
「あの子は少し頭がおかしいのではないでしょうか?私は子育ての経験がないので、断定はできませんが…」
などと言ってくる…
「どうして?」
「子供らしくないというか…人間らしくないというか…正直いうとあまり関わりたくない感じです」
家政婦は首を傾げながら苦々しく言う。
「それは…どういう事…」
最後に会った、1歳半のアキラは普通の成長をみせる子供だった筈。
自分の知らない、この3年ほどの間に何が…
「はい…こちらです。では」
家政婦は部屋の前までくると案内を終えて去ろうとする。
「え、一緒に来て頂けないのですか?」
少し驚き聞く…
アキラがどんな生活をしているのか、もっと聞きたかったのだが…
「申し訳ありませんが、私も他に用事がありますので…」
丁寧に頭を下げて再び去ろうとする家政婦。
「あの、待ってください!アキラと遊んだりする時間は…とっていないんですか?」
事務的な関わり方が伝わってきて…聞いてしまう。
「はい、私があの子の事で任されているのは衛生面と食事ですから。普段から独り遊びばかりしてるようですし、では…」
今度こそ頭を下げて下の階へ降りていく家政婦…
「……」
あまりの環境に言葉をなくしてしまう健次。
もう少しまともな生活を想像していただけに…健次は胸を痛める。
アキラに会うのが、少し恐くなる。
しかし、健次は…ドアを軽くノックして、その隔離された部屋へ足を踏み入れる。
「アキラ…?」
そっと名前を呼びながら…
「……」
返事は帰ってこなかった。
「あ、アキラ…」
ふと、視界に飛び込んできた茶色の髪、後ろ姿…
確かにそこへは、あの時より成長したアキラの姿…
4歳児にしては小柄なようだが…
アキラは、なにやらパソコンの文字ゲームかなにかを夢中でしているようだ。
イヤホンをつけ、こちらに背中を向けている為、自分に全く気付いていない…
「……」
アキラの生活環境…
あらためて全体を見てみると、アキラは木製で大きめの高い柵つきベッドの中で独り過ごしている。
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