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第18話
アキラの、そっけないと受け取れる、この行動もアキラが自分自身の気持ちを抑え守る為にせざるおえない行動だと気付いた時は…どうしようもなく胸が痛んだ…
アキラを一番苦しめていたのは…
自分だったのだから…
「おはよっせんせー!これみてー」
アキラのベッドから離れてすぐ、隣に入院している少年が健次の足に抱きついてくる。
「ナオ君、おはようございます、どうしました?」
健次は少年にも優しく話かける。
健次はココを任されている医師だから…小児病棟すべてのこどもの回診をしている。
アキラだけ…特別待遇にはできない。
何気なく他のこどもの頭を撫でたり、抱き上げたり…
アキラは、それを見て…すぐ理解した。
健次は、自分だけの存在ではないということ…
みんなの先生だということを…
それでも、親のいないアキラにとって健次は唯一の存在だから…
他の子供に優しくする姿なんか見たくないのだ…
幼い心に渦巻く葛藤…
しかし…アキラは一度として、健次を独占したいと訴えて困らせたことはない…
そんなどうにもならない気持ちを抱かせるモノを…ただ見るのを止め蓋をすることで、他に迷惑をかけず独り済ましてしまっていた。
そんな…賢くて不器用な…アキラ。
こどもらしく振る舞うことを知らないアキラ…
そのように育ってしまっているから…
僕たちだけで、アキラを変えていくのは難しい…
アキラの、心からの笑顔を見る為には…本当の両親からの愛情が必要だと切実に思う健次。
かといって…、親に会わせてやる訳にもいかない。
そんなことをしたら…アキラを余計悲しませてしまうから。
アキラが心の底で望んでいても、両親の話は…避けていた。
伝え方が分からないから…
しかし、きっかけは突然に、アキラの元へやってきた。
健次がアキラと病院の庭を散歩をしている時…不意に呼び止められる。
「こんにちは」
可愛い声に振り返ると、幼稚園の制服姿のこども…
「あぁ、こんにちは、いらっしゃい。コウジ」
その子は楠木コウジ。
アキラの母違いの弟にあたる子供だ…
アキラとは一歳ほどしか違わないが…身長はアキラより高く元気に成長している。
コウジも健次に懐いていて時々、母に連れられ病院まで遊びにくるのだ。
いつもは夕方に来るので、アキラと顔を合わせる事はないのだが、ついに出会ってしまう…
丁度、アキラは健次に手を引かれ歩いていた。
「……」
健次がコウジの名前を呼んだ時…ピクっと握る手を反応させるアキラ。
アキラだけを特別扱い出来ない健次が唯一、院内の子供たちと差をつけていることは…
名前を呼び捨てで呼んでいること…
そして今、健次は何気に身内のコウジを呼び捨てで呼んでしまったのだ。
アキラは、それに反応したのだ…
「……今、幼稚園から帰りなのかな?お母さんは?」
アキラの事を気にしつつ、コウジに話かける健次。
「うん、お母さんはじむの人とだいじなおはなしがあるって…ぼく、だから先生さがしにきたんだよ。けんじ先生はなにしてるの?その子、だれ…かんじゃさんかな?」
はきはきと話すコウジ…アキラに気付いて聞いてくる。
「……」
アキラは健次の手を握ったまま、健次の顔をチラッと見る。
アキラも相手が気になっている様子だが…自ら言葉は発しない…
二人の関係について話すか迷ったが…
アキラよりやや薄い茶色の髪に茶色い瞳のコウジ。
純粋に健次の言葉を待っている。
「えぇ、そうですね。この子は今、ここに入院してますが…ええと、名前、言えるかな?」
健次はアキラを優しく促す。
「……くすのき、あきら」
健次に言われて、やや俯き呟くように言うアキラ。
「えっぼくといっしょだね。ぼくは、くすのきこうじって言うんだよ、もうすぐ4さい!はじめまして!こんにちは」
アキラに向かって、可愛いらしい笑顔で元気よく自己紹介するコウジ。
「……」
そんな元気なコウジの関わりに、答え方が分からず言葉がでないアキラ…
一歩後ろへ下がってしまう。
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