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第21話

「アキラ、一人一人個性があるのですから、僕が変なことを言ってしまったから気にしたんですよね…すみません」 ゆっくり教えながら謝る健次。 不用意な言葉は繊細なアキラの心を傷つけてしまうから… 「…ううん、みんなと同じようにしてみようと思ったけど…やっぱりオレにはできない。うまく、みんなと話せない…」 (けんじさんが来たら笑うように…でも、同じ年の子供に笑うだけでは駄目だから…) 「…アキラ」 「でも、もうやめた。話さなくても、オレは困らないから…」 息をついて諦めたように言うアキラ。 「アキラ、それでは…ずっとひとりきりになってしまいます。同じ年頃の子どもたちも、色々と新しい事を教えてくれますよ?」 幼いうちからそんな事を言うアキラをなだめてみるが… 「合わせるの…疲れる。それに、みんな親のことばかり話すし、一人の方がいい…」 俯いたまま…アキラは言い切る。 「…アキラ」 「…オレ、親のことで話せること、あまりないし…でも、けんじさんの事を話す訳にはいかない…ここの先生だから。オレの話し相手は…けんじさんがいるから…オレ、けんじさんだけでいいや…」 ぱっと瞳を合わせて言うアキラ。 「……」 アキラの言葉は、嬉しいが…やはりどこか虚しい。 ただ、アキラなりに同年代の子たちに打ち解けて話そうとしてみていた事がわかった… 一人で殻にこもっていた訳じゃない… こうして自分相手にしっかりした会話ができる。 ただ、慣れていないのと…人に触れ合うこと、苦手意識が染み付いてしまっているだけで… (そういう性格も、やっぱり似てる…兄さんに) でも、全く同じでないことはよく分かった。 アキラに関することや親のこと…知らないから話せないなら、僕の知るかぎりのことを隠さず伝えよう。 「アキラ、僕は…アキラの両親について、少しなら分かりますよ」 「……?」 健次の言葉に、アキラの反応はあまりなかった。 アキラが両親のことを知りたいだろうと思っていた健次なので、少し面喰らう。 「…アキラ?」 「別に、教えてくれなくていい…」 ポツリと答えるアキラ。 「えっ?でも…」 アキラの真意が読めず、言葉に詰まる。 「さっきは、コウジが兄弟なら、その母親は自分の親かと思って…聞いてみただけ…」 「だから…アキラは母親のことが気になっているんでしょう?」 「違うよ…ただ、母親だったら、聞いてみたいことが…あったから…」 やや小声になり答えるアキラ。 「…聞いてみたいこと?」 また首を傾げる健次… 「……なんで、オレを、産んだのか…オレはどうして生まれたのか…知りたかった」 自分の存在理由… それは存在価値とも言える。 「……」 「…親に捨てられたこと、自覚はあるけど…理由がわからないと…モヤモヤして、ずっと気になっていたから、それで…」 アキラの言葉にはっとする健次。 平気なふりをするのがうまいアキラ… そっと視線を向けて健次の様子をうかがう。 「アキラ…それは…」 しかし、アキラに伝える言葉が続かない… 「…また、健次さんを困らせてる?…もう、いいよ…親のことなんか…どうでも」 アキラは諦めているように言って、話しを終わらせようとする。 「いえ、…それなら、会いに行きますか?」 健次は深く考えて、ぽつりと提案する。 実の母親との再会を… 「えっ…」 ふと、アキラの表情が変わる。 驚いたような…困惑したような…微妙な表情だ。 「……アキラが会いたいと思うなら、叶わないことはないですから…」 アキラの母親は、父親ほど冷たい人間ではないことを知っているから… 母親に会いたくないと思う子はいない… けれど、アキラの場合は…

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