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第22話
やはり本人の気持ち次第…
捨てられていると思っているアキラが…
その親に本当に会ってみたいと思っているのか…
「……会いたい」
しばらく、無言で考えて…ぽつりと呟く幼いアキラ。
やはり…当たり前ですね。
「わかりました…連絡をとってみますね。でも、会うまでには時間がかかると思います…待っていられますか?」
おそらく、アキラの母親は楠木家の事を怨んでいる筈だから…説得には時間が必要。
障害児(アキラ)が生まれた責任をすべて母親に背負わせ、追放した楠木家を…
「…ウン」
複雑な表情だが…しっかりと頷く。
健次はアキラの気持ちを汲み取り…アキラの母親の行方を探す。
そしてほどなく連絡先は見つけることができたが、やはり…再会を拒否。
というか、楠木家と関わり合いになりたくないと、話しをする間もなく電話を切られてしまう。
確執は相当深い…
しかし、だからといって諦めてしまうわけにはいかない…
アキラと約束したのだから…
それでも、時が経つにつれ、アキラの心は諦めの色をみせはじめる。
健次はさりげに…アキラの母親の情報を差し障りない点だけ伝えていった。
それは…、母親は日本人ではないことや…楠病院でナースとして働いていたこと、アメリカの優秀な大学を卒業した人など…
アキラは黙って聞くだけだったが…
話しの流れから、アキラが生まれた時の話しになると、質問も投げ掛けてきた。
低出生体重児であったこと、偽りの誕生日に関することなど…
話せるだけ話す健次。
そして…アキラが生まれた時、自分が生きて欲しいと強く願ったこと、愛情をもって見守っていたことも、しっかり伝える健次。
アキラの父、満の考えは非情過ぎて、とても伝えられなかったが…
アキラには…誰にも望まれず生まれてきたなどと思って欲しくなかったから。
しかし…母親の説得には、予想していた以上の時間がかかった。
連絡をとりはじめてから、すでに一年が経っていた。
アキラは病院で誕生日をむかえ、5歳になる。
身長も少し伸び…足の筋力も平均まで回復して、来たときは、つたい歩きがやっとだったアキラも今では駆けることができるようになった。
見た目は健常児となんら変わりはないアキラ。
相変わらず、他のこどもたちとは打ち解けないが…たまに来る弟コウジの話しは聞いているアキラ。
健次が仲良くするようにと言った為、気を遣っているようにも見えたけれど…
そんな時…健次の熱心な説得が通じたのか、アキラの母親が一度だけ…
たった一度だけだが、再会を了承してくれたのだ。
すぐそのことをアキラへ伝えに行く健次。
「…会える?」
やはり感情は抑えているようなアキラの反応。
「はい、ただ一度だけの約束ですが…」
そう伝えると…
「…母さんは、オレに会いたくないんだよね…」
ぽつりと呟くアキラ。
「…アキラ」
これだけ待たされたら、そう思うのは無理もない…
「アキラ、違うんです。アキラのお母さんは、この、楠木の家全部を嫌っているんです。だからアキラが嫌いで会うことを拒んでいたわけではありませんから…」
健次は誤解がないよう説明しようとする…
「全部…なんで?」
ぽつりと聞き返すアキラ。
「楠木家は…五年前、アキラのお母さんへ、怨まれても仕方ないしうちをしてしまったんです…だから」
とても悔しくて悲しい思いを味わわせてしまった。
「健次さんも…?」
一緒に?
「僕は、知りませんでした。あの人が病院を追放されてからも、ウソを教えられていました…昔から、僕は楠木家の方針に反対していたので…人道的でないことは、僕の耳に入らないようにされていたのです」
「……」
「気付いていれば、責任を背負わせて追放するなんてことはさせなかった筈です。止められず、申し訳ありません」
誠意を込めてアキラにも謝る健次。
「ううん…よかった。健次さんは優しい人…」
緊張していたアキラの顔に笑みが覗く…
「アキラ…」
健次が落ち着いた声で呼ぶと…
「オレ…会ってみる。オレも一度だけでいいから。せっかく健次さんが探してくれたんだから…」
アキラは前向きに答える。
「そうですね…」
優しく答える健次。
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