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第23話
この出会いの先が、どうなるのか健次にも予想、把握できないが…
もしかしたら、良い方向に進むかもしれないと、少しの期待を胸に、アキラを母親のもとへ連れて行く…
アキラの母親の名前は…
リアナ。
洋風の淡いブラウンの髪色、グリーングレイの澄んだ瞳…花のように清楚で美しい女性が…アキラの母親だ。
再会は…とても自然だった。
静かな雰囲気のカフェに単独でやってきたリアナ。
健次がまず挨拶と謝罪、そしてお礼をいい…
アキラを紹介しようと健次が見ると…
アキラは実の母親の姿をまっすぐ見つめていた。
目に焼き付けるように…
そして、健次が紹介する前にアキラは自ら英語を使って挨拶をはじめたのだ。
幼いアキラが英語を話せるなんて知らなかったので健次は驚いてしまう。
アキラの英語はほぼ完璧だった。
へたをすれば日本語よりも流暢に話している。
母親のリアナも感心した様子で、使い慣れた英語を使って聞いてくる。
『この子に英語を教えてくださったのですか?』
あまりアキラに視線を向けず、健次を通して話をしようとするリアナ。
『いえ、僕は教えていませんよ…』
柔らかく首を振り、二人が英語を使うので…
英語を使って続ける健次…
『すべて独学ですよね。アキラはあなたに似て、とても優秀な子どもですよ…』
アキラに軽く語りかけ、リアナにも伝える。
『…いいえ、この子は院長の血を濃く受け継いでいますね』
やや間を置いて、意味深な表情でアキラを見て言うリアナ。
『…やはり、怨んでいますよね。ですが、アキラには何も悪い所はないんです。アキラだけは怨まないでやってください…』
健次は必死に伝えるが…
『……私は、貴方の一族を許すことはできない。たった一度…期待に添えず、健常でない子供を産んでしまったばかりに…私はすべてを失わされた。深く傷ついて、数年、心を病んで何も出来ない状態が続いたの…』
リアナは静かに語る。
『……』
その胸の内で乗り越えてきた苦しみが健次にも痛々しく伝わり、言葉がでない…
『……?』
判らない単語があったアキラも…その意味を感じ取ってか、無言のままだ。
『やっと…立ち直れたの、過去を振りきって仕事も始め…愛する人も出来た。ようやく取り戻せた普通の生活を…再び失いたくない、忘れたいの…貴方がた一族すべて。たとえ…それが血を分けた息子でも…』
ゆっくりと話すリアナは…息子アキラへ伝わるように…
つらく、悲しげな表情で言う。
(忘れたい…)
『……』
アキラはその母親の言葉を聞いて…
少しだけ視線を下げる。
しばしの沈黙のあと…
アキラはそっと慰めるように…片手でリアナの手に触れ、柔らかく握りしめる。
『……!?』
リアナは積極的な息子の姿を…驚きの瞳で見る。
アキラは母親の心を…察することができる子だから…
初めて触れ合った母と子…
『……オレのこと…忘れて、いいよ…』
静かな沈黙を破ったのはアキラ…
ポツリと呟くように言葉を出す。
わずかな母の温かさを感じながら…
こどもの当たり前に持つ独占欲を示せないアキラ。
『オレの存在は、今のあなたを苦しめるだけ、分かったから…』
続けて、そんなふうに伝える幼いアキラ。
『あなたの生命力が…あなた自身を苦しめているのね。物分かりの良すぎる、可哀相な子…。あなたが生まれた時…とても小さかったあなたを見て、とてもここまで成長できるとは思えなかった…』
アキラの片手を包むように指を重ねる母。
『……』
アキラはやはり触れられることに少し緊張しているようで…
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