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第24話
自分で触れていったのに戸惑っている。
そんな可愛い…こどもなのに…
『…生きているのね』
小さな手の温もりを感じながら呟く母リアナ。
再会の話が来るまで…自分は、この子のことを殺していた。
必死に…
五年前、別れたあの日から…
そんな自分は…この子の母である資格はない。
リアナは心の内で思いながら…
『でも、あなたに許された時間は少ないから…』
そっとアキラに囁きかけるリアナ。
生まれながらに、治る見込みのない難病を抱える我が子へ…
伝えたい言葉を…
アキラはまだ自分が先天性の難病を持っていることなど知らないから…
リアナの言葉の意味が判らなかったが…リアナは続ける。
『だから…誰にも縛られない、自由な生き方をしなさい。そして後悔をしないよう…今を、その一瞬を大切に生きなさい…』
優しく言葉にするリアナ。
アキラは、その母の言葉を…しっかりと心に記憶する。
そして頷くアキラ…
『……』
そんな我が子を見つめ、手を握ったまま…アキラの頬へ優しくキスをするリアナ。
『……!』
アキラは突然の行為に驚いたような表情をするが…
『…ごめんなさい』
最後にそう、真剣にアキラへ謝る。
『……ううん、オレが、あなたの人生を狂わせてしまった。だから、オレのいないところで…必ず幸せになってください』
大人びた言葉を発する若干5歳の子、そうならざるおえなかった。
『えぇ…必ず、約束するわ…』
頷き、アキラの手を離すリアナ。
複雑な心を隠し…少しだけ微笑むアキラ。
リアナはアキラとの会話を終え…静かに見守っていた健次に瞳を向ける。
「…健次先生、分かりますよね?」
健次に向けられた言葉は、先ほどから会話に使っていた英語でも、日本語でもなかった。
「え…あ、はい」
リアナはアキラに聞かれたくない内容なのか、いきなり中国語で話しかけてくる。
突然だったので返事に詰まる健次だったが…健次も3カ国語くらいは習得しているので…慌てて頭を切り替えて対応する。
アキラはさすがに分からないようで不思議そうに驚いている。
「私の心境…聞いていただけますか?」
「はい…」
「不思議です。五年も会わない息子なのに、こうして触れると…愛しく思えてくる。大人って…勝手ですよね」
静かに語りはじめるリアナ、アキラには伝えられない思い。
「リアナさん…」
その、母リアナの言葉に少し希望がもてたのだが…
「半分は私の血が…半分は、憎むべき人の…一族の血」
しかし現実を見るように言葉を続けるリアナ。
「秤にかけると…やはり、それでも憎しみの方がまさってしまう…」
「……」
それほど、憎まれた一族であることを情けなく…恥ずかしく思う健次。
「…そんな一族の中でも、あなたは唯一、信頼できる医師だから…」
ポツリと伝えるリアナ…
「…どうか、この子のことを見守ってやってください。お願いします」
純粋に…本当の気持ちで頼む母親の姿…
「不出来な親の代わりに…」
「リアナさん…。はい、確かに…」
その気持ちを切ない想いでひき受ける健次。
「ありがとう…」
切なく痛む心を抑え微笑むリアナ。
母親のせめてもの愛情…
アキラに伝えたかったが、お互いをここで断ち切る為に…
伝えないで欲しいと添えたリアナ。
複雑な想いを…
その後…リアナは静かに席を立った。
自然にはじまり自然な別れ…
最初で最後の出会いになってしまったが…アキラも充分理解しているようで…
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