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第5話 晴れのち曇り 三

「 楽しかったねー 」 帰りの自転車の上ですっかり眠りこけていた雄介を草太が帰ってきてすぐにお風呂に入れる。 まだ眠そうな雄介。 お風呂で火照った桜色の頰に、今日で少し日焼けした華奢な肩。 バスタオルで草太から渡された雄介をしっかりと抱える。 シャンプーとなんだろう、子どもの甘い匂い。 腕に抱いた小さな愛おしいこの子になぜか幸せが沢山来るようにと思ったのはなんかの予感だったのかな。 少し休んでから、三人で家を出た。 小田急に乗ると雄介はまた元気に喋り出す。 景色を見ながら知ってることを僕に教えてくれる雄介。くるくる変わる表情に時折黙ってる草太を心配そうに見つめる小さな眼差し。 この子もなんか感づいてるのかもしれないとさっきの不安がまたもたげてくる。 小一時間電車に乗って東京に近い駅で乗り換える。後は三駅ほどで降りるだけ。 その乗換駅で僕は雄介とバイバイした。 これ以上は僕が入ってはいけない領域がある。 血の繋がりのない、草太とは恋人だけど公認ではない関係。わきまえなきゃいけない。 でも雄介と草太が一緒に住むようになったら、僕はどうしたらいいんだろう? 今更ながらにその事実に暗くなる。 昨夜の契約できないはお前とはもう一緒にいられないってことだったのか…… 乗換駅の騒々しいコーヒーショップの中で僕は急にたったひとりで降り立った異国の空港を思い出した。 また、一人になる。 「 はせ、馳!」 肩を叩かれて初めて隣に草太が居ることに気がついた。 「 なんだよ、随分呼んだのに、気がつかないんだから、 ちょっと待ってて俺もコーヒー お前、お代わりする?」 僕の返事の前に草太はレジに並んだ。 数分後にホットドッグとコーヒーを二つずつ乗ったトレーを前に草太が話し出す。 「 ごめんな、待たせて……」 『 ごめんな、これからは雄介と一緒だから 』 と聞こえた僕の耳、また悪い癖が出てるんだ。 「 草太、おばさんなんて?」 「 いや……」 口を濁す草太。 「 馳、この辺りの不動産屋少し見てって良いか?」 『 きた。キタヨハセ……』 心の影を押さえつけ僕は 「 うん、もちろん!」 と軽くなんでもないことのように返事をする。 草太そんな辛そうな顔しないで…… 僕は大丈夫だよ。

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