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第4話

「いいから乗れ」 榮に荷物をまとめさせて、この時間から泊まれるホテルを漸く探すと俺は車に二人を乗せた。 現実だと受け止めるには時間が必要だ。 「麻次、何でそんなに怒ることがある。喜んでくれると僕は思ってたのに」 荷物を手にして俺の行動が分からないとばかりに非難する榮を、無理矢理後部座席に乗せるとアクセルを踏む。 「榮、俺はもうオマエを好きじゃない」 好きな気持ちを消すように、ずっと過ごしてきた。 だから、子供を作ったと言われても嬉しくはないのだと告げる。 ガキだったころからずっと一緒に過ごしてきて、ありとあらゆるもの全てに榮を優先してきた。 「な、何でそんなに酷いこと.....言うんだ」 榮の声が詰まってずずっと鼻を啜る音が聞こえ、泣いていることが振り返らずにも分かる。 「三年前、俺はオマエに捨てられた。オマエはそんなつもりじゃなかったかもしれない。でも、俺にはそうとしかとらえられなかった」 信号の色が変わり車を停める。 今なら、榮にもちゃんと分かってもらえるように話が出来る。 「.....僕には、麻次しかいないのに。僕は麻次しか触れないし、触られたくないし、そんな簡単なことが何で分からないんだ」 子供のようにしゃくりあげる声が聞こえる。 榮は、潔癖症で俺以外の人間に触られるのを拒否する。 だけど、出ていかれた時点でそれが克服できていないとかは、考えつかなかった。 「とにかく、三年で俺は榮を忘れた。別にゲイではないから、他の男を作ってもいない。しかもインポみたいなものだから、女の恋人もいない」 「だったら.....」 「ふざけるな。だから、折角忘れたのにオマエに戻れって?そんなこと、出来るわけねえだろ」 一生一人で生きていくことだって覚悟した。 苦しくて堪らない気持ちと身体をどんだけ我慢したかなんて分かるはずがない。 そう考えたら腹立しくて憎らしくて堪らなくなる。 もう一度、愛せるわけなどないだろ。 「僕には.....麻次しかいないから。麻次が、よその子供を欲しそうに見てたから、絶対に作ろうと思って.....」 身体を丸めて泣いている榮につられたのか、赤ん坊もふぇぇと泣き始める。 「泣くなよ。.....ああ、榮に子育てなんてできないだろうな。その子は俺が引き取ってもいい。だから、ちょっと時間をくれ」 「.....子供だけ?」 俺の言葉に信じられないような表情を浮かべて、綺麗な顔を榮は歪めた。 「そうだ.....オマエの面倒はもう無理だ」

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