3 / 45

Ⅰ:3

 そう、俺は今、ゲイ専用のデリヘル店で電話番の仕事をしている。  と言っても、あまりに頭の悪過ぎる(態度も悪過ぎる)俺の仕事ぶりを見兼ねたマネージャーが、殆んど俺の分まで働いているんだけど。 「退いてよこの役立たず」 「いつ見てもキモい」 「早く辞めろよバーカ」  マネージャーに指示を受けて外へと出て行く売り子達が、仕事の様に俺へ暴言を吐いて行く。 「ほぉら、また言われた」 「…………」  ユッキーが意地悪く肘で突いてくるが何も言い返せない。だって、この店の大抵の奴は俺のことが嫌いだから。  そりゃそうだ。全くもって使えない癖に、飼い主が“オーナー”ってだけで無条件でここに置いてもらってんだから。  その上そのオーナーってのが… 「糸っ!!」  先程まで電話に出ていたマネージャーに叫ぶ様に呼ばれて振り向けば、その顔は驚く程真っ青だった。異常を察知する。 「ま、マネージ「糸、ヤバイ逃げろ。オーナーにバレたっ」」 「げぇッ!!」 「ほら! 言わんこっちゃない!!」  ユッキーに背中を押され、俺は慌てて着の身着のままって状態で玄関へと走り出した、が。 「オーイオイオイオイ、どこ行くんだぁ? テメェコラァ」 「うぐッ!!」  スニーカーを爪先に突っかけて外に飛び出した瞬間、高い位置から首根っこを掴まれた。 「あ…と………買い出し?」 「手ぶらでかぁ?」 「あ"」 「…………」  無言になったなった相手を見上げれば、そこにはウルトラ不機嫌な顔をした美形が俺を見下ろしていた。 「あ! 数馬さん!!」 「お疲れ様でぇす!」 「おう、行ってらっしゃい」 「「はぁ~い!」」  どいつもこいつも俺たちの隣を擦り抜ける時に、オーナーこと数馬さんを見て目をハートにして行きやがる。

ともだちにシェアしよう!