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Ⅰ:3
そう、俺は今、ゲイ専用のデリヘル店で電話番の仕事をしている。
と言っても、あまりに頭の悪過ぎる(態度も悪過ぎる)俺の仕事ぶりを見兼ねたマネージャーが、殆んど俺の分まで働いているんだけど。
「退いてよこの役立たず」
「いつ見てもキモい」
「早く辞めろよバーカ」
マネージャーに指示を受けて外へと出て行く売り子達が、仕事の様に俺へ暴言を吐いて行く。
「ほぉら、また言われた」
「…………」
ユッキーが意地悪く肘で突いてくるが何も言い返せない。だって、この店の大抵の奴は俺のことが嫌いだから。
そりゃそうだ。全くもって使えない癖に、飼い主が“オーナー”ってだけで無条件でここに置いてもらってんだから。
その上そのオーナーってのが…
「糸っ!!」
先程まで電話に出ていたマネージャーに叫ぶ様に呼ばれて振り向けば、その顔は驚く程真っ青だった。異常を察知する。
「ま、マネージ「糸、ヤバイ逃げろ。オーナーにバレたっ」」
「げぇッ!!」
「ほら! 言わんこっちゃない!!」
ユッキーに背中を押され、俺は慌てて着の身着のままって状態で玄関へと走り出した、が。
「オーイオイオイオイ、どこ行くんだぁ? テメェコラァ」
「うぐッ!!」
スニーカーを爪先に突っかけて外に飛び出した瞬間、高い位置から首根っこを掴まれた。
「あ…と………買い出し?」
「手ぶらでかぁ?」
「あ"」
「…………」
無言になったなった相手を見上げれば、そこにはウルトラ不機嫌な顔をした美形が俺を見下ろしていた。
「あ! 数馬さん!!」
「お疲れ様でぇす!」
「おう、行ってらっしゃい」
「「はぁ~い!」」
どいつもこいつも俺たちの隣を擦り抜ける時に、オーナーこと数馬さんを見て目をハートにして行きやがる。
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