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Ⅰ:4

 長身でスタイル抜群、艶やかな黒髪に切れ長の瞳、スッと通った鼻筋と薄めの唇。  そう、数馬さんは男に興味のない俺から見てもドキッとしてしまうくらい滅茶苦茶イケメンなのだ。  二十歳の俺と一回り違うはずの年齢差も匂わせない、大学生と言っても余裕で通る年齢不詳な美貌。  ただ、滅多に笑わない。笑わないんだけど、その笑わない所が良いんだと意味の分かんねぇことをいつも売り子達が言ってる。  実際笑わないだけで数馬さんは売り子に優しいから、人気があるのは理解出来た。  だから取り敢えず売り子と同じ様に挨拶しとけば何とかなるかな…と思ったんだけど。 「………か、数馬さんお疲れぇ~ス」 「お前は疲れてなさそうだけどな」 「……………」  完全に間違いだった。  数馬さんは首根っこを掴んだまま俺を引きずり部屋の中に入って行く。そうすれば自ずと数馬さんはマネージャーと会うわけで、 「お、オーナー、お疲れ様です」 「お疲れ。で、何でヨシが電話番とネット両方やってんだ? あ?」  あ? は俺を見て言ってる。 「いや、その…さっきは偶々糸が席を外してまして」 「可笑しいなぁ。俺は今日一時間置きに声変えて電話してたんだけどよぉ、一回も糸の声は聞いてねぇ気がすんだよなぁ」 「ッ、」 「で、結局どうなの? 糸、お前ちゃんと働いてんの?」  折角マネージャーが庇ってくれたけどもう無理だ。俺はからっからに乾いた口を動かし言った。 「は………働いて、ねぇっす」  その後すぐ、俺は数馬さんから鳩尾に重ぉい一発を食らってゲーゲー吐いた後、吸い込まれるようにして意識を飛ばした。

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