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Ⅰ:6
◇
「すいませんがレイは予約で埋まってます。リュウキ、アカリでしたら同じ様に楽しめると思いますがどうでしょう。はい、リュウキで20時にこちらで。はい、お待ちしてます」
あれから3ヶ月。
まだまだ敬語はなってないが、前よりも格段に苦情は減ったし予約も取り付ける事が出来る様になった。
「リュウキさん、20時に205で」
「糸、205は入ってるから301にして」
「じゃあ301で」
「…………」
こう言った細かいミスはまだまだ多い。
売り子からも無視されることが普通だ。
それでもまだ、前みたいに働いてない訳では無いからマシだと思えた。
「糸くん大分慣れてきたね、仕事出来てるじゃん!」
ユッキーが支度をしながら話しかけてきた。今日はナース服を手に持ってる。
「まぁ、少しは」
「相変わらず愛想は無いね~」
そう言いながら何故かユッキーが抱きついて来た。前からそうだが、やたらコイツは俺に構ってくるしスキンシップも多い。
「離れろ。早く行けよ」
「酷~い! コレから変なオッサンにあんな事やこんな事されちゃうのに、そんな僕を労ってくんないの!?」
「じゃあ辞めれば」
「もうっ!!」
そうこうしている間に、マネージャーに急用の電話が入った。様子からして苦情の様だ。
「はいっ、はい…え!? 申し訳ありません! はい……只今皆予約で埋まっておりまして…」
何やら大きく揉め始めた様子に部屋の中に緊張が走る。
「直ぐ掛け直しますので、お待ち頂けますか?はい、失礼致します」
電話を切ったマネージャーが、部屋に残っている売り子達に振り返った。
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