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Ⅰ:7
「誰か、マサキの携帯以外の連絡先知らないか?」
名前が上がったのは、少々残念な容姿の売り子だった。
「マサキがどうかしたんですか?」
すかさずユッキーが問うと、マネージャーの顔が苦しげに歪んだ。
「客の所へ行ってないらしい。予定からもう1時間過ぎてお怒りだ」
マサキの相手はこの店の常連客であり、オーナーの仕事繋がりの相手らしく、怒らせると少々厄介な相手だった。
「でも、マサキは大分前に出て…」
「逃げたんだ」
誰からとも無く言われた言葉にマネージャーが頭を抱える。
「不味いな、今日の相手は美形嫌いだから…今は誰も回せない」
オーナーに連絡するしかないか、とマネージャーが携帯を手に取る。しかし…
「俺、行きますよ」
マネージャーの手から携帯を奪った。
「糸…?」
「数馬さん、今日は忙しいって言ってたから。取り敢えず俺でどうか相手に聞いてみて下さい。ブス専なら俺でもイケるでしょ」
マネージャーはポカンと俺を見ていた。
「処女でも良いか、聞いてくださいね。ほら、マネージャー早く」
俺がそっちに側に行くとは思わなかったのだろう。売り子達もみなポカンとしていた。
マネージャーは魂が抜けたように相手に連絡している。その内話しながら此方を振り向いて、俺にGOサインを出した。
「糸くんッ」
只でさえ1時間遅れているのだ。
慌てて目的地のホテルまでの地図を片手に部屋を出ようとすれば、後ろからユッキーが俺の腕を掴んだ。
「相手はネコじゃなくてタチだよ!? 本気で行くの!?」
「穴使うなら勃たなくても良いし、丁度良いだろ」
「糸くん!!」
もう一度引かれた腕に振り返る。
ユッキーの後ろで、マネージャーが心配そうに佇んでいた。
見知らぬ男にカラダを好きにされるなんて、怖くない訳がない。でも、あの店にいて、衣食住を与えられて、それが電話番だけで釣り合うとは思っていなかった。
「これで少しは恩返し出来んのかな、俺」
そう言えば、何故かマネージャーもユッキーも泣きそうな顔をして俺を見ていた。
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