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Ⅰ:8
※モブとの絡みあり
向かう足取りは重く、思っていたよりも時間がかかったが迷う事無く指定のホテルに辿り着いた。
正直、怖い。
どんな男かも分からない奴に、これから尻を犯されるのかと思うと足が震えた。
でも、遅かれ早かれこうなる筈だったのではないかとも考える。
金に困っていて、かと言って使う頭脳もない俺は、結局カラダで稼ぐしか出来ないんじゃないかと思うのだ。
そこにゲイかどうかは関係ない、相手が何を求めるかなのだから。
「初めて……褒めて貰えるかもな」
全く笑ってくれない、いつも怒ってばかりの俺の飼い主。
二十年共に過ごして来た母親には一度も期待した事なんてなかったのに、数馬さんに褒められるかもしれないと思うと下がったはずの気分が少しだけ浮いた気がした。
見上げたホテルは見慣れた毒々しいものでは無く、寧ろ高級感漂う立派なものだった。
それだけ相手が大物と言う事なのか、余計に体に力が入る。
失敗は許されない。
そうして踏み出した一歩がどれ程重いものだったのか…俺はこの後、嫌という程思い知ることになる。
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