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Ⅰ:9

「へぇ、君がトイくん?」  “トイ”とはマネージャーが咄嗟に付けた何の捻りも無い俺の源氏名だ。  開いた扉の先に居た紳士然とした男、八島(やしま)は、俺を見た途端爬虫類みたいに目を細めて舌舐めずりをした。 「さぁ、中に入って」 「し…つれい、します」  背中に回された手の温度が気持ち悪い。  身震いしたのが伝わったのか、八島は可笑しそうにクツクツと喉を震わせた。 「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ。酷い事はしないから」 「はい…」  そう言われたって怖いものは怖い。  俺は震える手で携帯を取り出すと、売り子達がやっている様にプレイスタートの連絡を店の専用電話に入れた。が、可笑しなことに誰も電話に出ない。  いつもならマネージャーが出られなくても、必ず誰かしら出るのに。  コールをし続けるが一向に状況は変わらない。仕方なく不安を覚えつつも電話を切ると、隣に立って様子を見ていた八島が俺の顔を覗き込んだ。 「どうかした?」 「あ…いや、」 「唯でさえ定を狂わされてるんだ、もう始めても良いかな?」  品の良い高そうなスーツに身を包んだ八島は、その服装に不釣り合いなギラギラした欲望を垂れ流し俺の腕を掴んだ。  怖い怖い怖い怖い怖い  気持ち悪い    嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ  無理矢理押し込まれる形で連れ込まれたトイレの中で、八島に見られながら何度も何度も腸内洗浄をされた。  換気機能が優れいているのか不愉快な臭いは直ぐに取り払われるものの、それでも排泄した直後は無臭と言う訳にはいかない。自分の排泄物の匂いと男の荒い息に涙と吐き気が込み上げ、耐えられず嘔吐するが八島は余計に喜ぶだけだった。

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