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Ⅰ:11

 ガンガンと腰を振りながら俺の口の中に突っ込む八島は最早獣と化していて、紳士なんて言葉はどこかへ吹っ飛んで無くなっていた。  俺の頭の中はただただ混乱していて、何をされているのか分かっている様でいて思考がついて行かない。  無理矢理喉の奥に突っ込まれて嘔吐くが、既に腸内洗浄の時点で胃の中の物すべてを出し切っていた俺からは胃液くらいしか出てこなかった。 「はは! 私のモノを胃酸で溶かすつもりかい?」  気持ち悪くて、胃の中も頭の中も視界もぐるぐると回っている。  男が煩く何か言っているけど、もう俺にはそれを聞き取ることが出来なかった。  ひたすら早くこれが終わる事だけを願って脱力すると、屈服したと思ったのか八島がまた嬉しそうに何かを叫ぶ。  それと同時に口の中に不味い物が広がった。  吐き出すこともままならず男に尻を向けた形で四つん這いにさせられ、遂にそこへ男の指がかかった。  あぁ…  売り子って大変なんだな。  カラダを売るのって大変なんだな。  お前らが俺を悪く言う気持ち、すっげぇ良く分かった。  ちょっと尊敬したかも。  でも…  この仕事も俺には向いてないかもしんないな…だって、何一つ気持ちよく無い。気持ち悪くてしょうがない。  カラダすら売れない俺には数馬さんの世話になる資格ってやつが無いのかも。  だったらやっぱり、離れるしかないのかな…と、いつも堂々巡りを繰り返す答えに再び辿りついたその時。  男が繰り返す荒い呼吸の合間に、バタンと扉の閉まる音が聞こえた気がした。 「ん…?」  八島もそれに気付いたのか、一度俺から指を外すと入口に続く方を見る。  すると矢張り、その方角からは人の足音が聞こえてきた。  二人…ほど居るだろうか? 「な、なんだ?」  それは迷わずこのベッドルームに辿り着き、荒々しい足音を立てて部屋に踏み込んできた。 「八島さん、そこまでです」 「………え、なんで」  思わず呟いたのは俺だった。  だってそこには、ここに居るはずの無い人が立っていたから。

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