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Ⅰ:15
「糸ッ」
「いって…」
それが数馬さんの足だったのだと、体制を整えた時に漸く気付いた。左頬と肩が痛む。俺は数馬さんに蹴られたのだ。
「俺がいつ、お前に客を取れと言った?」
「でも…俺、」
「俺がッ、いつッ、お前に! 客を取れと言った!?」
「うッ!!」
パァン、と頬を殴られた時の破裂音にも似た音が他人事みたいに耳に届いた。
痛みは俺を馬鹿にするみたいにじわじわと時間差でやって来る。
余りの力の強さに目を回してくらくらしていると、その俺の胸倉を数馬さんに掴まれた。
「テメェを電話番に置いた意味、分かってんのかぁ?」
「ッ、」
もう一度頬を殴られ、今度は反対方向へと顔が向く。
「ンな見れたもんじゃねぇツラしといて、店の売り物になるとでも思ってんのか? あ!?」
「でも、」
「黙れッ、俺が売り物にならねぇっつったらならねぇんだよ!」
何度も何度も殴ったあと俺を床に放り投げ、そのまま数馬さんの足で横っ面を踏みつけられた。
散々殴られた顔はどんどん腫れ上がってきているし、鼻血を垂れ流し酷い有様になっていることは見なくても分かる。
「テメェを拾ったのはヨシじゃねぇ、俺だ。テメェは俺のモンなんだよ分かるか? あ? 俺が飯食えっつったら飯を食え。クソしろっつったらクソしてろ。テメェはただ黙って俺の言ったことに従ってりゃ良いんだよ。それが出来ねぇならテメェはもう「オーナーッ、もう止めて下さい!」
俺の顔を踏みにじっている数馬さんに、マネージャーが耐え切れず止めに入った。
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