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Ⅱ:4

「ッ!!!」 「ッ!!??」  俺は自分でもびっくりするほど強い力でユッキーを突き飛ばす。 「数馬さんっ!?」  何でここに、と驚いて声を上げたのは俺だけだった。ユッキーは俺の横で顔を真っ青にして座り込んでいる。 「あのっ、あの俺っ、」  パンパンパンパンパンパンッ 『あっあっあっ! くっ…あっ! あぁあうっ、あっ、ひっ、』  緊張感の走る部屋の中で、テレビからは未だに激しい溺愛セックスに感じて善がる男の声が響いている。  だが、そんな音を気にしている余裕なんて俺には無かった。  だって、絶対いま数馬さんはブチ切れてる。  黙ったままこっちに近づいて来る足音に、俺は反射で殴られる衝撃に備えた。が、その衝撃はいつまで経っても来ることは無く、数馬さんは俺を通り越す。  俺は呆気に取られ思わず数馬さんを見上げたのだが…俺を見下ろす数馬さんの目に思わずひゅっと息を呑んだ。  氷の様に冷たい目。  その目で俺を見下ろしながら、ベッドに腰掛けた数馬さんがニヤリと口元だけで笑った。 「俺の前でヤッて見せな」 「は、……え?」  訳が分からずポカンとしていると、数馬さんの視線は俺を通り越しその後ろに向いた。そして再び信じられない言葉を紡ぐ。 「ユキ、続けてやれ」  今度こそユッキーは「え、」と声を出した。 「ヤリてぇんだろ? ほら、見ててやるから続けろ」  数馬さんが長い足を組みながら言い放つ。 「悪かったなぁ、そんなにテメェがヤリてぇ盛りだとは思わなくてよ。何なら八島もあのまま任せりゃ良かったか?」 「な…」  何を言われているのか、俺は直ぐに理解できなかった。 「か、かずまさ」 「早くしろ。今すぐここで、俺の前でヤれ。ユキ」  呼ばれたユッキーが体をビクッと跳ねさせる。 「今まで尻弄ってたんだろ?」 「いっ、いえ! まだ…そこまでは…」 「じゃあ今から弄れ。ローションとゴム持ってこい」 「でっ、でも、」 「何度も同じことを言わせるな」  ユッキーは慌てて部屋から出て行った。多分、自身の部屋に戻ったのだろう。ゴムと、ローションを取りに。 「数馬さん」 「…………」 「数馬さんっ!」  黙ったまま見下ろされるのが堪らなく辛かった。言いつけを守らず部屋を抜けたのは俺だ。だから、殴られると思った。  なのに予測したそれは一つも無い。むしろ数馬さんは俺を怒鳴りもしない。  どうして  どうして  どうして  痛みしか知らない俺はどんどん不安になる。 「数馬さん…」  呆然とする俺の背後では、相変わらず愛され過ぎた男が喘ぎ声を漏らしていた。 『あっあっあぁあぁあああぁあッ!!!』

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