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Ⅱ:5

 数馬さんが見下ろす床の上で下半身だけ衣服を剥がされ、オムツ替えの子供の様な格好で尻にユッキーの指を銜え込んでいた。  言われた通りローションを使えば指一本などスムーズに入り、違和感はあっても痛みは無かった。  抜き差しされる度にんっ、んっ、と訳のわからない声が漏れる。だが決して気持ちが良いとは思えなかった。  俺の横顔にずっと数馬さんの視線が突き刺さってる。  手を差し伸べられたあの日、俺は数馬さんのモノになった。世の中の人間がどんな感覚を快楽と呼ぶのか知らないが、心を鷲掴みにされたあの時の感覚を表すなら、俺にはそれこそが“快楽”だったと言える。  テレビから響き渡る甲高い男の喘ぎ声の合間に、にちゅにちゅと粘着質な音が耳に届く。ユッキーは数馬さんの存在に少し緊張している様だったけど、どこか濡れた様な目で俺を見ていた。  けど、何も感じない。  先ほどユッキーに触れられ上げた声は、驚いたから漏れたものだ。  この世に生まれ落ちてからというもの痛みしか与えられなかった俺に、耳を甘噛みされ首にキスをされるそんな感覚は未知なるものだった。  驚き思わず力が抜けた。でも、こうして慣れてこれば何てことは無く、ただの作業の様だと思った。  指が増やされる。  恐る恐る動いていたそれが急に積極性を持ち、グニグニと曲げたり伸ばしたりし始めた。そして掠めた“変なところ”に、俺のカラダが一気に飛び跳ねる。 「ンあっ!」  ユッキーの息が荒くなった。  明確にそこを狙って擦られ、激しく動く指でローションが泡立つ音が聞こえる。あっ、あっあっと堪えられず自身の口から声が漏れても、それすら俺には別世界のものに思えた。  だって、俺に快楽を与えるのは数馬さんだけだ。俺にとって、こんなものは快楽じゃない。

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