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終章:2
目の前を歩いていた背中がピタリと止まった。そんな先輩を幾人かの女性が振り返る。
「ヨシ、ちょっと店の前で待ってろ」
「えっ」
それだけ言って先輩は、あれ程場違いだと思っていた店の一つに姿を消した。そうして入っていった店があまりに先輩と不釣り合いで、俺は思わず店の入口を三度見する。だが何度確認してもその店はその店でしかなく…。
外で待っていろと言われたにも関わらず、俺は好奇心に負けて同じ店の中へと飛び込んだ。
「待ってろと言っただろ」
店の中に入って来た俺を見た先輩は、案の定嫌そうな、バツが悪そうな顔をした。だが俺はそれよりも、その先輩の掌に乗った小さな塊に釘付けになった。
「それって…」
そう呟いた俺を無視して先輩が店員に何か指示を出すと、やがてその店員は小さな塊を手に奥へと消えて行った。その姿を追った視線の先で目が合った一人の女性。その女性は、驚いた顔をしながらもどこか期待を込めたような目で俺を見ていた。
「ん?」
そうして気付く、妙な視線。
気になり辺りを見回せば、そこら中からパートナーそっちのけでこちらを伺う女性たちの視線が俺に集中していた。
漸くそこで、女性かカップルしかいないジュエリーショップに男二人で入店した事を思い出す。な、なんてこった…。
「俺、外で待ってますね!」
そう言って店から飛び出した俺の後ろで、先輩が盛大な溜め息を吐いたのが分かった。
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