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第3話
朝になって目を覚ますと、熱は下がっていた。体も楽で、さっと起き上がりリビングにでる。
「あ、神崎君、おはよう」
「······お前、どこで寝たんだ」
「え?ここ借りたよ。体調はどう?」
「そこじゃ寒かっただろ。体調はもう何ともない。」
ここ、と言いながらソファを指さした冴島。けれどそこには毛布らしきものも置いていない。春になって日中は暖かいが朝晩は冷えるのに。
「寒くなかったよ。よかった。でも暫くは仕事は休みだからね」
「あ?良くなったんだ。今日からは行く」
「駄目だって!言うこと聞かないなら志乃に言いつけるからね」
「······チッ」
その若を出せば俺が大人しくなると思っているあたりに少し腹が立つ。······まあ、その通りだけれど。
「事ある事に若の名前を出すな」
「だってこの方法が楽なんだもん」
「············」
顔を洗いに洗面所に行き、ぼーっと自分の眺めた。
純粋な日本人とは違う金色の髪。右は灰色、左は水色といった異様な目。
この姿でもう何年も生きているのに、未だに気味の悪さには慣れることはない。
「神崎君!ご飯できたから早くおいでねー!」
リビングから聞こえてきた冴島の声。ここに冴島はいないのに、それに頷いて返事をした。
歯を磨いてリビングに行くと、テーブルに並んでいる白米に味噌汁に焼き鮭。朝からこんなにまともな飯を食べるとは思っていなかった。
「俺ね本当は料理とか苦手なんだよね。だから美味しくなかったらごめんね」
「······別に」
箸を手に取って用意された飯を口に運ぶ。
冴島が言ったようなことは全く無かった。
「美味しいよ」
「本当!?よかったあ!」
確か、冴島は俺より年下のはずだ。
それなのに頭も良くて、家事もできるのか。少し尊敬する。
「お前はすごいな」
「えー?急に何?」
「若と同級生って事は、俺より年下だろ。医者もやって、こうやって家事もできる。俺にはできないことばかりだ」
「··················」
ぽかんと口を開けて間抜けな表情で俺を見た冴島。どうしたんだろうとじっと見ていると、何度が瞬きをして、やっと言葉を落とした。
「意外だった······」
「何が」
「······そんな風に、君に褒められると思ってなかったよ」
「何だそりゃ」
「ほら、君ってもっと······街の噂では冷酷非道で心がないって話だったからね。信じていたわけじゃないけど、驚いちゃった」
下らない話だった。食事を続けて、空になった皿をキッチンに運ぶ。皿を洗っているといつも心が軽くなるから、この時間は好きだ。
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