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第5話

*** 母親はイギリスで有名な女優だ。息子の俺から見ても綺麗な人で、その人から生まれた俺も、母さんに似て日本人離れをした容姿だった。 「彩葉(いろは)は綺麗ね。綺麗なものは大好きよ」 青い目が細められて、綺麗な笑顔で俺の頬を撫でる。 「貴方には日本は合わないと思うの。だって私の子供だもの。その綺麗な容姿が、この先貴方を傷つけるかもしれないわ」 「どうして?俺の顔、嫌いになるの······?」 「違うの。日本人はね、自分と違うものを見ると批難する人が多いの。それを"個性"として受け取ってくれる人はまだまだ少ないわ」 「······難しいね」 自分の金色の髪に触る。確かに、純粋な日本人の髪は金色じゃない。 ボーッと、鏡に映る自分を見る。目の色も、茶色や黒で、俺みたいに青色と灰色じゃない。 「彩葉、だから、私とここで暮らしましょう。」 「父さんは······?」 「あの人は研究馬鹿なのよ。イギリスにくるより、日本で慣れた場所で、仲間と一緒に研究したいそうよ」 「バラバラになるの?」 「そうね。でも、心は繋がってるのよ」 当時の俺はそれがよくわからなくて、でもそういうものなんだとわかったフリをして頷いた。 5年間日本で育ち、それからはイギリスで暮らすことになった。母さんは忙しいのに俺を大切にしてくれて、すごく愛してくれたと思う。 「彩葉、今日は公園に遊びに行きましょう!」 「うん」 「彩葉と外で遊ぶのは久しぶりだから、母さんお洒落しないと!」 「母さんはそのままで綺麗だから、俺がお洒落するんだよ」 「あら、彩葉もとても綺麗よ」 母さんにキスされて、嬉しくてついつい顔がにやってしてしまう。 「彩葉、愛してるわ」 「俺も!」 だから、そんな幸せが崩れるなんて思っていなかった。

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