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第6話
***
「───神崎君、神崎君!!」
「っ!」
肩を軽く叩かれ、名前を呼ばれて目を覚ました。心臓がバクバクとうるさい。嫌な記憶を消すように慌てて起き上がり、目の前で驚いた顔で立っている冴島を無視して部屋を出て、飲み物を飲みにフラフラする足取りでキッチンに立った。
一気に水を飲んで、ゼェゼェと呼吸を繰り返す。
「っ、は、はぁ······」
「神崎君、ゆっくり呼吸しようね。」
「はっ、わる、い······」
「大丈夫、大丈夫だからね。体辛くない?ちょっと座ろうか」
促されて床に腰を下ろす。背中を撫でられて呼吸が落ち着いていく。
「落ち着いたらソファかベッドに移動しよう。まだ熱が引いてないからね」
「······もう、眠くない」
「うん、眠らなくていいんだよ」
汗で濡れた服が気持ち悪い。着替えたいけれど、そこまでの体力も気力もない。
「神崎君?」
「······動けない」
「わかった。じゃあちょっとごめんね」
ふわっとした浮遊感。冴島が俺を抱き上げソファに座らせた。意外と力があるんだな。
「悪い」
「ううん、大丈夫だよ。さて、汗かいて気持ち悪いんじゃない?体拭いてあげるから、服脱げる?」
「······そこまでしてもらわなくていい。大丈夫、ありがとう」
「駄目だよ。体が冷えちゃうから。お湯とタオル借りるね。」
冴島がリビングから出ていって、俺は背もたれに体を預け、もう随分と会えていない母さんのことを思い出した。
本当に綺麗な人だった。自分を着飾ることもなくて、家族に見せる姿も、女優として舞台に立っている姿も、それはきっと完璧だった。
「はい、腕上げて」
いつの間にか冴島は戻ってきていて、俺の服を脱がし、温かいタオルで体を拭いてくれる。それがやけに優しくて、昔母さんに同じ様に看病してもらったことと重なった。
「明日には下がるといいんだけどね······」
「······干渉するなって、言ったのに······こんなに世話になって、悪い」
「そんなこと気にしない。何か飲む?それか、お腹すいてない?」
その言葉に首を左右に振って、新しい服を着てソファに寝転んだ。
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