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第8話

神崎君にこれを伝えるかどうか凄く悩む。 彼の体調が戻ってからでも遅くはないだろう。けれど、上司の居場所は把握しておいた方がいいのか······。 「······いや、やめよう」 体調が悪い時に不安を感じさせるのはいけないな。 仕事はすぐには再開する気にはならなかった。 お腹すいたなぁと、勝手に冷蔵庫を開けさせてもらって、買ってきた食材で簡単なご飯を作って食べた。 お風呂も借りて、スッキリしてからパソコンを見て、立岡から送られてきたどうでもいいメールや、今度志乃に請求する金額を確認する。 「────······母さん」 不意に小さな神崎君の声が聞こえてきた。 近づいて顔を覗くと、涙を流している。熱のせいか、夢を見ているせいか、判断はつかないけれど、苦しそうにはしていない。 「······大丈夫だよ。」 そんな根拠の無い言葉をかけることなんて誰でも出来る。 「君を助けたいな」 そう思っても、心の中はそう簡単には覗かせてくれない。 こんなにも誰かを助けたくて、もどかしい思いをするのは初めてだ。 床に座ってソファにもたれ掛かる。 神崎君の綺麗な顔を見ているのは飽きなくて、気がつけばそのまま眠りに落ち、朝になっていた。

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