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第10話

結局その日も神崎君は休んでくれることになった。 「冴島は子供の頃から医者を目指してたのか?」 「えー、そんなことないよ。高校の頃に志乃の喧嘩に巻き込まれたことがあってね。志乃が怪我して俺は何も出来なくて、それが嫌だなって思ったんだよ」 「若が怪我?そんなに重傷だったのか?」 「まあね。昔はほら、鉄パイプとかそんなの持って喧嘩するやつが多かったから。でもそれが高3の事でさ、必死で勉強したよ。」 神崎君が俺に興味を持ってくれたことが嬉しかった。だからベラベラと喋ってしまう。 「神崎君は?何で極道してるの?」 だから、ポロッとデリカシーのない事を聞いてしまった。 「······守れなかったものがあって、初めは警察とか、そんなのになりたかったけど、秩序を守らない奴に守っている奴が勝てるわけがないと思った」 「えっと······守れなかったものって······?」 「······母さん」 ボソッと呟くように言葉を落とした神崎君。こんなに簡単に聞いてはいけないことだった。 「あの、ごめんね」 「別に。······こんな話をしたのはお前が初めてだ。誰にも言うなよ」 「うん。わかってる」 踏み込みすぎた。折角少しでも覗けた心が、また閉ざされてしまったら悲しい。 「神崎君」 「あ?」 「君のこと、もっと知りたいんだ。」 「······俺なんて、下らない人間だぞ。知ったって意味がない」 「それは俺が決めることだよ。」 そう言って神崎君の前に立つ。 「教えてくれないか。君が、そんなに自分自身を苦しめる理由を」 「······知りたいなら、躊躇うなよ。俺は中途半端な奴が嫌いだ」 確かにそうだ。甘く踏み込むぐらいなら、思い切りぶつかるべきだ。 「教えてくれ」 そう言うと神崎君は自虐気味に笑った。

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