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第11話 神崎side

俺を知りたいと言った人間は初めてだった。 それも、こんなに堂々と踏み込んできたのは。 「まあ、今は話す気ないけどな」 「えー、期待したのに」 「面白い話じゃねえし、気分が乗った時にな」 「······いつも冷静なくせに、気分が乗るとかあるの?」 本当に怪訝そうに首を傾げる冴島が面白い。俺をなんだと思っているんだ。 「ある。馬鹿にするな」 「あ、ごめん······。単純に疑問で······」 フッと笑ってテレビをつける。朝のニュースキャスターが笑顔で頭を下げた。 「神崎君」 「何」 「俺さっきも言ったけど、君のこと知りたくて、だから君の体調が戻ってもそばに居ていいかな」 不安そうにそう言った冴島。俺の何をそんなに知りたいのかわからない。 「何がそんなに知りたいんだよ」 「······わからないんだ。こんなの初めてで。ただ君のことが知りたい」 「あのなぁ······それじゃあまるで、俺のことが好きみたいだな」 「えっ!」 巫山戯て言ったのに、冴島は本気にしたのか目を見開いて俺をじっと見ている。 「おい、冗談──······」 「そうか。これ、好きなのか······」 「冴島、違う。待て」 「成程ね。恋ってこんな感じなんだ。すごい、初めて感じたよ。」 話を聞かない冴島の肩を持ち、「落ち着け」と声を掛ける。 「冗談だ。本気にするな」 「······神崎君は冗談で言ったかもしれないけど、俺は確信したから、気持ちは本物だよ」 「······げ、幻覚だ」 「幻覚ってそういうことを言うんじゃないよ?」 手を離して力なくソファに座る。 「俺が君を好きでいるのは、迷惑かな?」 「······別に」 「よかった。」 訂正は効かないらしい。困っていると、冴島が俺の目線に合わせるように床に座る。 「そばに居てもいい?」 「······勝手にしろ」 その好意を無下にすることはできなくて、だからそんな中途半端な答えを出してしまった。

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