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第13話
体と髪を洗い、頭からシャワーを浴びて濡れた髪をかき上げる。ふと左手首の傷が見えて、もしかするとこの傷のせいで冴島がショックを受けているかもしれないと、今更心配になった。
湯船に浸かって深く息を吐く。
これはちゃんと隠さないと、周りが嫌な気分になってしまう。
風呂から出てタオルで体を拭き、服を着てリビングに行った。そこでは冴島が電話をしていて、その内容から相手は若だとわかった。
「それはいいけど、まずはそっちの処分をどうにかしろよ」
俺と話す時とは違う、少し厳しめの口調。リビングの入口の壁にもたれ掛かり、その様子を眺める。
「だから······。梓君が大切なのはわかる。でも周りをちゃんと見ろ。」
呆れているのか、溜息を吐いて、テーブルに肘を立て頭を抱えている。
「ああ、じゃあな。」
電話を終えた冴島はもう1度深く溜息を吐いた。
「冴島」
「わっ!い、いたの、ビックリした······」
「お前も風呂入れば。それから、シーツも変えておくし、今日はお前がベッドで寝ろ」
「えー、それは申し訳ないよ」
あはは、と笑って首を左右に振った。
「ずっとゆっくり眠れてないだろ。いいからベッドで寝ろ。」
「んー······。あ、神崎君のベッドって大きいよね」
「ああ、まあ······」
「じゃあ一緒に寝よ!」
「······それは違う」
何を言っているんだと冴島を睨むように見ると、「いいでしょ?ほら、広いから!」と屈託ない笑顔で言う。
「その方が気を使わなくて済むから、楽なんだけどな」
「······わかったよ」
了承することしか出来ないような言葉を選ぶからタチが悪い。
「じゃあ、お風呂借りるね」
「ああ」
冴島が風呂に入っている間にシーツを変え、寝る準備を進めた。
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