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第17話

立岡の住むマンションの一室。立岡は情報屋でもあるから玄関には厳重なセキュリティがされている。 インターホンを鳴らし少し待つと、ゆっくりと玄関が開いた。 「神崎じゃん。久しぶりだね」 「入っていいか」 「うん、いいよ」 丁度風呂から上がったところだったようで、上半身は何も着ないでタオルを首にかけ濡れた髪を雑に拭いている。 「また傷が増えてるな」 「あー、この前行った台湾でね」 「そういえば速水が怒ってたぞ。」 「何で?あ、電話に出なかったやつ?だって本家が忙しそうだったし、速水って忙しい時うるさくなるじゃん。出たくないよ」 珈琲を入れてくれた立岡に礼を言ってカップに口をつける。 「で、何の仕事で来たの?」 「これ」 「相良組の情報?志乃が婚約破棄した子のところだよね?あ、そう言えば相馬からも連絡来てたな······」 「相良舞が梓さんを襲った。家にまで押し入ったみたいだ。」 「あーらら。梓君も災難だねえ。まあ志乃の恋人になるならそれくらいあってもおかしくないか。それで、相良組の情報の詳細を調べろって?」 1度頷くと、立岡は「了解」と言って大きなパソコンを置いたデスクの席につく。 「他にも仕事があるのか?」 「えー、無いよ?」 「ならそれが終わったら俺についてこい」 「キャー!イケメンからのお誘い?いいわよいいわよ!この仕事15分で終わらせちゃう!」 裏声でべらべらと話す立岡は、その間も手を止めることはない。 「服取ってきてよ。」 「ああ」 「あと髪乾かしてー!」 「はいはい」 ドライヤーを持ってきて濡れた髪を乾かす。 立岡の手の動きが異様に速い。それから集中力が凄い。 ドライヤーを切ったタイミングで、立岡が「ああーーー!!」と大声を上げた。 「おっけ、できた。ちょっと待ってよ······」 「服ここに置いとく」 「ん、ありがと······」 ドライヤーを片付けて、ソファに座って立岡を待っていると、立ち上がり服を着替えて資料とUSBを手に持ちそばに来る。 「はい、これ」 「ありがとう」 「じゃあイケメンさん。デートに行きましょうか」 「······デートじゃねえ」 立ちあがって家を出る。 乗ってきた車に乗り込み、助手席では立岡が「ちょっと寝る」と言って目を閉じている。 「あ、待って、どこ行くの?」 「本家」 「······デートは?」 「だから、デートじゃねえ」 ガーンと効果音が聞こえるくらいの落ち込みを見せた立岡に、何を期待しているんだと言いたくなった。

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