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第19話
ガチャっと玄関が開く音が聞こえた。ちょうど夜ご飯の為に作ったおかずを盛り付けていたところだった。
「──······ただいま」
「おかえりなさい」
ただいまって言ってくれたのが嬉しかった。リビングに出て返事をすると神崎君がこっちに来る。
「これ」
「え······?」
拳を俺に向かって突き出した神崎君。何だろうって手を出して器型を作ると、ポトっとそこに落とされた銀色のそれ。
「か、鍵?」
「ここに居るんだろ?」
「う、うん······。え、いいの······?」
「ああ。それないとお前も好きに外に出れないしな。」
嬉しくてそのまま固まって動けない。
「なあ、いい匂いがする。飯作ってたのか?」
「う、うん。そうなんだ······口に合うかわからないけど······」
「食べる。······ちょっと着替えてくる」
「うん。······あ、神崎君!」
部屋に行こうとした神崎君を呼び止める。振り返った神崎君に「ありがとう!!」と大きな声でお礼を言った。
「ああ」
神崎君はクスッと小さく笑った。
その笑顔が見れたのが嬉しかった。
鍵を大切にキーケースに入れて、すぐにご飯の準備をする。
部屋着に着替えて出てきた神崎君はテーブルの席について、テレビをつけた。
「······今日、立岡の所に行った。」
「そうなんだ。あれ、仲良かったっけ?」
「まあ、あいつには気を使わなくていいから楽だな」
「わかるかも。向こうも遠慮がないから、こっちもいいやって思うんだよね」
「ああ、まさにそれだ。で、今日仕事の為に2人で出掛けてたんだ。それで割と······疲れた。思ってたより遅くなったし」
仕事の愚痴を話してくれるなんて思ってなかった。
「お疲れ様。お風呂沸いてるから、ご飯食べたら入って早く寝ようね」
「······全部やってくれたのか。ありがとう」
「こちらこそ。こうして話をしてくれると思ってなかったし、凄く嬉しい」
「そうか」
テーブルに料理を並べて、2人で揃って手を合わせる。
「いただきます!」
「いただきます。」
今日は嬉しいことばかりで、幸せすら感じる。
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