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第21話 神崎side
立岡の相手に疲れて、仕事帰りに合鍵を作り帰ってきたら美味そうな飯と温かい風呂が待っていた。
仕事から帰ってきて、こんなに温かい環境があるのは初めてで、嬉しい気分になった。
「······疲れた」
ベッドに寝転び、小さく呻きながら寝返りを打つ。明日も仕事だ。それもそろそろ速水を休ませないといけないから、明日は帰ってこれないだろう。
欠伸をすると涙が浮かんで、目尻から零れていく。
そんな時、暗くしていた部屋に明かりが入ってドアの方を見ると冴島がちょうど部屋に入ってきた。
「神崎君、寝た?」
「起きてる」
「あれ、泣いてるの?」
「欠伸が出ただけだ」
端っこに寄って冴島に背中を向ける。
「明日、帰ってこれないだろうから、飯は待ってなくていい」
「仕事忙しいんだね。まあ、そりゃあそうか。」
「ああ。だから······」
「うん、わかった。気を付けてね」
一緒に暮らしている相手に仕事の理解があって助かる。
「でも、無理しちゃ駄目だよ」
その言葉は無視をして、早く眠ろうとゆっくり呼吸をする。
「おやすみ、神崎君」
その言葉が聞こえても返事ができなかった。こんなに気持ちよく眠るのは久しぶりな気がした。
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