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第23話
どれくらい時間が経ったかはわからない。
女の顔も、俺の手ももう赤く染まっていて、それでも話し続ける相良を、もう何も言えなくしてやりたい。
「綺麗だけど、不気味よねえ。何その目、気持ち悪いわ」
「ああ、俺もそう思うよ」
そうして一方的な暴力を振るっていると、誰かが地下にやって来た。
「神崎、何かわかった──······おい、何してんだよ!!」
やってきたのは相馬だった。俺から女を離して、誰かに電話をし、俺を外に出してそのまま速水に回収された。
「お前は何やってんねん!若に言われてないやろうが!」
「······疲れた」
「あぁ!?お前のせいで俺らの仕事が増えんねん!」
汚れた手を洗い、幹部室に連れてこられた。その場で速水が若に電話をかけて、俺はすぐに家に帰るように若から命令を受けた。
「でも、仕事」
「いいから早く帰って。仕事増やさんといて」
「速水、もっと言い方が······」
幹部室にいた夏目に庇われるけれど、俺がした事は確かにこいつらに迷惑しかかけていない。
「神崎、悪いけど今日は帰れ。また俺か志乃さんかが連絡するから、それまでは自宅謹慎な」
「······悪かった」
「いいから。お前が何もなくあんなことしない奴ってのは分かってる。」
そうフォローされ、組から出された。乗ってきた車に乗って家に帰る。今日は帰れないって言ってたのに、こんなことになってしまった。
あの時、あの女の話なんて聞かなかったらよかった。そしたら誰にも迷惑をかけなかったはずだ。俺が悪い。わかってる。
夏目も庇うんじゃなくて責めてくれればよかった。一層のこと、速水のように。
「え、神崎君?おかえり!早かったね?」
いつの間にか家に着いていて、冴島が驚いた顔で俺を見ていた。
「神崎君?神崎君、大丈夫?」
「······また、やっちまった。」
「え?何?······その手、どうしたの?」
手を取られて、そこに視線を落とす。
手の甲が青くなっていて、どれだけあの女を殴ったのかを物語っていた。
「神崎君、俺を見て」
「······っ」
「そう、上手だ。何があったか話せる?」
「······さ、冴島、お願いがある」
「うん、何?」
責めてほしい。お前が悪いって言ってほしい。そしたら気持ちが楽になるから。
「俺が悪いって、俺のせいだって、言ってくれ」
「え······」
「あ、あの時も、俺が······」
刺されて苦しんでる母さんを呆然と見ていることしか出来なかった。母さんが死んだ理由の1つはきっと俺だ。
「責めてくれ、じゃないと······っ!」
震える声が落ちていく。冴島は何も言わずに俺を抱きしめる。
「君は悪くない。だから責めないよ」
「っ、嫌だ、嫌だ······」
「神崎君、俺は君を責めない。君を傷つけることはしない。」
足から力が抜けていく。床に座り込むと冴島も俺を追いかけて床に座る。
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