神崎君に縋られるとどんな状況でも嬉しくなるんだと知った。 俺の背中に腕を回して抱きついてくる姿は、年上には見えない。小さく震えている体はこんなにも逞しいのに。 「神崎君、疲れたでしょ。手も冷やそうよ」 「······まだ待って」 「こうしてたら落ち着く？」 「うん」 不謹慎だけど、可愛い。 本当ならこのままキスをして、沢山甘やかしてあげたい。 「か、神崎君」 「何」 「ごめん、あの俺······医者としてこんなのは駄目なんだけどっ！俺さ、君が好きだから、あんまりこうされると······ドキドキしちゃって、えっと······」 「何、ハッキリしろよ」 小さく笑った神崎君が顔を上げる。さっきより顔色は良くて、調子は少しずつ戻ってきているみたいだ。 「さ、触りたくなるから······」 「なら、触れば」 「は？」 「触ればいい。お前に何をされても別に嫌じゃねえよ」 肩に神崎君の顎が乗る。いつもよりずっと鼓動が速い。 「ほら、触れば」 「っ、そんなの、我慢出来なくなるから駄目だよ」 「何だそれ。俺の事抱きてえのか？」 「······うん」 素直にそういうと、神崎君はふっと笑って「素直だな」と掠れた声で言う。 「別に、いいよ」 「えっ！？」 「好きにしてくれたらいい。」 俺から少し離れた神崎君が、目の前で綺麗な目を細める。 「やり方、わかんねえのか？」 「············」 何が起こってるのかわからない。神崎君から急に色気が溢れ出て、気がつけば唇に柔らかい感触がした。