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第32話
「······志乃から連絡があったよ。」
「え」
いつの間に。飯を食いながら驚いて冴島を見る。
「別に怒ってはないって。ただ、理由は教えて欲しいって」
「············」
「じゃないと、他の幹部に説明できないからって」
「······腹が立った。それだけだ」
「まあ、君が俺に話してくれたみたいに説明しておいたよ。」
「······余計な事を」
睨みつけると、苦笑を零して俺を見た冴島。食べ終わり、煙草を手に取る。
「君が煙草吸ってるのさ」
「あ?やめろとか言うんじゃねえぞ」
「違う違う!格好いいなって思ったんだよ」
「······褒めても何も出ねえぞ」
「素直な感想だよ。彩葉はいつも綺麗だから」
よく恥ずかしげもなく、何度もそんなことが言えるものだ。
でも、自分の容姿がいい事は理解しているから、そう言われても当たり前だとしか思わない。
「彩葉は、お母さんに似たの?」
「ああ。」
「お母さんはどんな人?写真無いの?」
「調べれば出てくる。名前はアメリア・ウィリアムズ」
そう言うと秀は目を見開き、俺をじっと見た。
「知ってるよ!?」
「ああ、有名だからな。」
「俺、あの人の出てる映画何度も観た······。え、でも、じゃあ······」
何が言いたいのかがわかった。きっと母さんの死んだ理由についてだろう。世界中でニュースになったそれを知らない奴の方が少ないのかもしれない。
「知ってる事はわざわざ聞くなよ」
「ぁ、うん」
静かになった秀。
同情されるのは嫌なのに、"所詮、その程度か"なんて思ってしまう。
俺が好きだとか、そんな事をほざくなら、もっと何か言葉を投げてくると思った。
「前にさ」
そう思っていると、秀が話し出して、その声に耳を傾けた。
「前に、極道になった理由を教えてくれたでしょ?」
1度頷いて、じっと目を見る。
「君は他にも守るものがあるの?」
その言葉は俺を、俺で無くするには十分だった。
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