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第33話
守るものなんて無い。
母さんを守れなかった俺が、ただ自己満足のためにそうしているだけなんだ。
「彩葉······?」
「······ただの、自己満足だ。」
「え?」
「俺は、自分の罪を無かったものにしようって、しただけで、何の意味もない······。こうしているのが楽なんだ。」
テーブルを強く叩きつけた。
「ごめんっ」
「······外行ってくる」
「彩葉!」
「ちゃんと戻ってくるから」
パーカーを羽織り、財布と煙草を持って家を出る。気付かないふりをしていたそれを指摘されるのは怖かった。
秀から逃げて、夕方の公園に足を踏み入れる。男の子が母親と手を繋いで滑り台の前で「あともう1回!」と言って母親は笑って「いいよ」と返していた。
俺もあの日、ああやって遊んでいるはずだったんだ。
「母さん、あの人、外人さんかなあ」
母親の手を離し、俺の元に走ってきた男の子。「ハロー」なんて話しかけてくるから、思わず笑ってしまった。
同じ様に英語で返事をすると、目をキラキラとさせる。
「えっと······外人さん?」
「いや、日本人だよ」
「えー?でも、英語話したよ!」
「英語も話せるんだよ」
男の子を追い掛けてきた母親は、「すみません」と言って軽く頭を下げるから、それを首を振ってやめさせた。
「母さん!日本人だって!」
「えっ?あ、もしかしてハーフですか?」
「はい」
「はーふ?はーふって何?」
母親が男の子に説明しているのが心を和ませる。
「英語話せるんだって!すごいよねぇ。」
「そうね。ねえ、そろそろ帰らないとダメでしょ?バイバイってしてね」
「うん!外人さん!バイバイ!」
「こら!あの、本当すみません······」
親子と笑って別れた。昔は外人だと思われることが俺にとっては嫌なことだったけれど、今じゃもう何も感じない。
時間が経って太陽が沈む。
街灯が遊具と、俺の座るベンチを照らす。
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