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第34話
早く帰らないと、心配するのはわかってる。でもなかなか動けなかった。また何かを言われて、そのせいで自分の中で思いを葛藤させるのが疲れるから。
重たい腰をゆっくりと上げ、煙草を咥えながら家に向かう。
狭い道を歩いていると前からフラフラと歩いてくる高校生と思わしき男達。こんな時間に歩き回ってるなんて······と思ったけれど、まだ21時にはなっていない。
「あ、お兄さん、金持ってない?」
「あ?」
突然そう声をかけられて眉を寄せる。明らかに頭の悪い奴の発言だ。
「ほらぁ、俺達学生に恵んでよ」
「············」
馬鹿だなぁと思いながら、そいつらをぼーっと眺める。
「聞いてんのかよ!」
足を蹴られて腹が立ち、そいつの腹を思い切り蹴り倒した。周りにいた奴らが驚いて俺を見るけれど、そんなものは気にしないで家までの道を歩いて行く。
「おい、おっさん!!」
「······お兄さんだ。」
「ああ!?何してくれてんだよテメェ!」
「お前らこそ、下らねえことしてんじゃねえよ。糞ガキが」
俺のその一言で火がついたのか、掛かってくる高校生を、大人気ないのは分かっているけれど、すぐに地面に倒した。
「今俺は機嫌が悪いんだよ。突っかかってくんじゃねえ」
「は、はい······っ」
もう1度家に向かい足を動かす。
家に着いて、リビングに行くと秀が項垂れるようにしてテーブルに肘をつき座っていた。
「······何してんだ?」
「彩葉!!」
「うるさい。······さっきの事なら気にしなくていいから、早く風呂入って寝れば」
「い、彩葉あの······あっ、それ、また喧嘩したの!?」
ただでさえ青くなっていたそこ。手を掴まれると地味な痛みが走って眉を寄せた。
「喧嘩······駄目とは言わないけど、あんまり傷つけないでほしい」
「······お前には関係の無いことだろ。それとも何だ。俺がお前のものだとでも言いたいのか?だから、俺のものに傷つけるなって?」
俺が傷つくのが嫌な理由は、俺には理解できないものだ。
嫌味のようにそう言うと、秀は悲しそうな表情をして、俺の手を握る力を強くした。
「そうだね。君は俺のものじゃない。でも、傷ついて欲しくないんだ。君が好きだっていう感情だけじゃなくて、ただ······本当に······」
手にポタポタと雫が落ちてくる。
秀を見ると、目から涙を零していた。
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