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第35話

「し、秀······?」 驚いて、1歩退くと、意外にも簡単に手は解けた。 「ごめん、ごめんね······。俺、君に酷いこと言ったくせにっ······君の負担になるようなことばかりして」 「や、めろ、泣くな」 焦って秀の肩を掴み、どうしたらいいのかも分からず引き寄せて強く抱き締めた。 「何で、抱きしめるのさぁ!」 「いや······どうしたらいいのか、わかんねえから······」 「優しくしたら、つけあがっちゃうよ······自惚れちゃう。君に迷惑は、かけたくないのにっ」 「落ち着けよ」 背中をトントンと軽く叩くと、余計に泣き出してしまったから、困ってしまう。 「なあ、頼むから泣き止んでくれよ······。」 「うっ、ごめん······」 「落ち着いたらでいいから、風呂入れ。飯は?食ったか?」 「食べてないぃっ」 「わかったわかった。作っておくから、入ってこい」 一向に動く気配が無い。仕方なく秀の腕を掴み、着替えを持って風呂場に連れて行く。 「ほら」 「······んっ、ありがとう」 風呂場からそのままキッチンに行き、軽い飯を作る。料理は得意ではないから、せめて食べられるものを作れるようにといのりながら、フライパンを手に取った。

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