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第36話 冴島side

恥ずかしいところを見せてしまった。 お湯に浸かりながら、温かさと恥ずかしさで顔に熱がたまる。 彩葉が出て行ってからすごく後悔をした。傷ついて帰ってきたのに、また傷つけて。 彩葉は俺が傷つかないように言葉を選んでくれるのに、俺にはその配慮が足りなかった。 広い浴槽の中で足を折って立てた膝に顎を乗せる。 自分のことでいっぱいになって、ご飯も作らずにどうすればいいのかを考えていた。彩葉は優しいから俺に怒らない。けれどその分彩葉には負担をかけている。 「はぁ······」 傷つけるような言葉はもう、使わないように心掛けないと。 ゆっくりと腰を上げ、風呂から上がる。 服を着て濡れた髪をわしゃわしゃと拭いて、リビングに出るといい匂いがした。 「彩葉······?」 「ああ、上がったのか」 キッチンで煙草を吸いながら、皿に料理を盛り付けている彩葉がいて、その格好良さに見とれてしまう。 「材料があったからカルボナーラにした。食えるか?」 「す、好き」 「よかった」 盛り付けられたそれはすごく美味しそうで、お腹がぐーっと音を立てる。 「ほら、早く食うぞ」 「うん」 彩葉は前に俺を凄いって、尊敬するって褒めていたけど、俺は彩葉の方こそそうだと思う。あんなに酷いことを言ったのに、気にもせずご飯まで作ってくれる。 「あ、おい、泣くなよ」 「っ、まだ泣いてない」 「お前は······見かけによらず泣き虫だな」 呆れたように息を吐き、俺に手を伸ばしてまだ少し濡れている髪をわしゃわしゃと撫でる。 「泣かなくていいから、それ食って今日は寝ろ。疲れてる時は休め」 「······ごめんね、本当に」 「気にしなくていいから」 困ったように笑うから、ここでまた泣いたら迷惑だなと思って、急いでフォークを手に取ってパスタを食べた。 「美味しい······」 「初めて作ったけど、意外といけるな」 「初めてなの?凄く美味しいよ」 口元を少し緩めた彩葉は「ありがとう」と言って、残りのパスタを黙々と食べた。

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