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第38話

朝起きると彩葉は既に起きていて、朝食を作りながら煙草を吸っていた。 「秀、卵潰れた」 「え?」 「目玉焼き、失敗して黄身割った」 「······半熟が好きなの?」 「それ以外は邪道だ」 眉間に皺を寄せてそう言うものだから、面白くて笑ってしまった。それを訝しげに見てくる様子にも笑いが零れてしまう。 「お前まさか半熟が嫌いなのか」 「いや、こだわりはないけど······ふふっ、彩葉は半熟が好きなんだね。初めて知ったよ」 「さっさと顔洗ってこい」 ジト目で俺を見て、背中を向ける。 すぐに顔を洗いに行って、歯も磨きリビングに戻った。 「邪道なお前にはお似合いな目玉焼きだ」 「······格好つかない台詞だね」 「うるさい」 手を合わせて「いただきます」と小さく言葉を落とした彩葉。俺もそれに次いで合掌して「いただきます」をした。 「今日は何するの?」 「何もしない」 「······寝て過ごすとか?」 「いや、ぼーっとしてたら1日終わるだろ」 「暇になったりしない?マイナスな気分になったりさ」 そう聞くと首を左右に振る。どうやら彼は少し不思議な過ごし方をするらしい。 「お前は?何すんの」 「んー······買い物行こうかな。」 「何の?」 「食材とかね。そろそろ買いに行かないと」 「······ならついて行く。車出すから、いる物全部買いに行くぞ」 ぼーっと過ごすって言っていたのに、結局俺について来てくれるみたいだ。それも車を出してくれるって······本当に優しいな。 「他に買う物ないのか」 「あ、待って!メモに書く!」 「そんなに急がなくていい」 しっかりと焼けた黄身を見て顔を顰めながら目玉焼きを食べる。そんな姿が可愛くて、写真に残しておきたいくらいだ。 「ニヤニヤするな」 「······ごめんなさい」 顔が勝手に緩んでいたみたいで、彩葉にそう注意されて、もう1度ご飯に向き合いながら何を買おうかなと考えを巡らせた。

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