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第43話

適当な昼飯を食べ、秀が部屋の掃除をしているのをボーッと眺めていた。 俺は掃除が嫌いだから、たまに掃除機を当てて終わるけれど、秀は拭き掃除までしてる。 「彩葉、ちょっとそこ退いてくれる?」 「ここもするのか」 「するよ。だからそっちに移動してほしいな」 「わかった」 移動してと言われた場所に座って、また眺める。それだけで結構時間は経っていたようで、不意に外を見れば空は赤くなっていた。 「もうこんな時間か」 「本当だね」 キリのいいところで掃除をやめた秀は、手を洗ってそのまま晩飯を作りに行く。 今日は何もしてないから、少しくらい手伝おうと腰を上げ、俺もキッチンに行くと秀が冷蔵庫を開けて野菜を取り出しているところだった。 「何作んの」 「わっ、びっくりした······」 「オムライス食べたい」 「オムライス?うん、いいよ」 それだけ伝えて、俺は風呂を沸かす準備をすることにした。 料理の手伝いをするつもりだったけど、俺がいても困らせるだけだと思ったから。 浴槽を洗って泡が流れるのを待つ。早く流れろと思いながらそこにシャワーを当てて泡を細かくした。 「彩葉ぁー!出来たよー!」 泡が流れてから、リビングに行く。そこには美味しそうなオムライスがあって、口の中の唾液が増える。 「いただきます」 「うん、いただきます!」 テーブルの席について手を合わせる。目の前で同じようにして食事を始めた秀。 昨日と同じ光景だけど、気分が違うのは関係が曖昧なものから、ちゃんと形を成したものに変わったからなんだとわかった。 「皿洗いは俺がするから」 「えー?いいよ。俺がするよ。彩葉はお風呂に入っておいで」 「······全部任せっきりだから、それくらいはやらせてくれ」 「うーん······わかったよ。」 不服そうだけど、それくらいは許してくれてもいいだろう。 テーブルの上に出していた秀の手に触れて、手の甲を撫でる。 「許せ」 「っ、お、怒ってないっ」 「そうか」 手を引っ込めて、食事の続きをする。 秀の顔が少し赤く染まっていた。

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