57 / 188
第57話 神崎side
秀に抱き締められて、いつもより深く眠った。朝はすっきりと起きることができて、腰にある甘い違和感さえ愛しく思えた。
まだ眠っている秀を起こさないようにベッドから抜けて、風呂に入り朝食を作った。1人でそれを食べて、スーツに着替え家を出る。
車に乗り、昨日のことを思い出すと少し恥ずかしくなって、それを忘れようと首を振り、車を発進させた。
本家に着いて抗争の準備を進める。
ここに置いてあるチャカは整備したし、もう1つのチャカは取りに行かないと。
誰にも知られていないその場所。親父も若も、幹部も、誰1人として知られてないだろう。
「速水」
「ん?何?」
幹部室で同じように準備をしていた速水に声をかける。
「チャカ回収してくる。何か用があるならついでに済ませてくるけど」
「あ、えっとな······いや、俺は何も無いかな。夏目、相馬、お前らは?」
「特に無いよ」
「俺も」
わかったと頷いて、出かける準備をする。
「部下連れて行きなよ。お前は1人での行動は禁止」
「······嫌だ」
「嫌だじゃねえよ。部下が嫌なら仲良しな立岡を連れて行けば?」
速水にそう言われて渋々立岡に電話をかけた。
立岡にならどこに置いているかがバレても、口外したりはしないと思って。
「どうしたの?」
電話から立岡の呑気な声が聞こえてくる。
「付き合え」
「え、え?告白?やだぁ!」
「チャカ取りに行く。1人での行動は禁止だとか言いやがった」
「それはこの間お前が自分を抑えられなかったからだろ。······いいよ。誰も知らないお前のチャカが隠されてる場所が知れるんだからね」
楽しそうにそう言われると、胸の中がもやっとする。本音はやっぱり誰にも知られたくなかったから。
「じゃあ迎えに来てね。待ってるよ」
「······わかった」
じっと速水を睨みつける。速水は「何だよ」と言って同じように睨み返してきた。
ともだちにシェアしよう!