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第57話 神崎side

秀に抱き締められて、いつもより深く眠った。朝はすっきりと起きることができて、腰にある甘い違和感さえ愛しく思えた。 まだ眠っている秀を起こさないようにベッドから抜けて、風呂に入り朝食を作った。1人でそれを食べて、スーツに着替え家を出る。 車に乗り、昨日のことを思い出すと少し恥ずかしくなって、それを忘れようと首を振り、車を発進させた。 本家に着いて抗争の準備を進める。 ここに置いてあるチャカは整備したし、もう1つのチャカは取りに行かないと。 誰にも知られていないその場所。親父も若も、幹部も、誰1人として知られてないだろう。 「速水」 「ん?何?」 幹部室で同じように準備をしていた速水に声をかける。 「チャカ回収してくる。何か用があるならついでに済ませてくるけど」 「あ、えっとな······いや、俺は何も無いかな。夏目、相馬、お前らは?」 「特に無いよ」 「俺も」 わかったと頷いて、出かける準備をする。 「部下連れて行きなよ。お前は1人での行動は禁止」 「······嫌だ」 「嫌だじゃねえよ。部下が嫌なら仲良しな立岡を連れて行けば?」 速水にそう言われて渋々立岡に電話をかけた。 立岡にならどこに置いているかがバレても、口外したりはしないと思って。 「どうしたの?」 電話から立岡の呑気な声が聞こえてくる。 「付き合え」 「え、え?告白?やだぁ!」 「チャカ取りに行く。1人での行動は禁止だとか言いやがった」 「それはこの間お前が自分を抑えられなかったからだろ。······いいよ。誰も知らないお前のチャカが隠されてる場所が知れるんだからね」 楽しそうにそう言われると、胸の中がもやっとする。本音はやっぱり誰にも知られたくなかったから。 「じゃあ迎えに来てね。待ってるよ」 「······わかった」 じっと速水を睨みつける。速水は「何だよ」と言って同じように睨み返してきた。

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