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第58話

立岡を家まで迎えに行って、助手席で煙草を吸うその姿を見て溜息を吐く。 「えー?何で溜息?」 「······別に」 「わかった。チャカの場所教えたくないんでしょー!それは仕方ないって言ったじゃん。下手な事しなきゃ良かったんだよ。」 「腹が立つ。スピードあげるから飛び降りろ」 「それってもしかしなくても死ねって言ってるよね?」 立岡が一頻りケラケラと笑った後、真面目な顔で「で、相良には何言われたの?」と聞いてくる。 「············」 「どうせ母親の事でしょ?せこい手使うよね」 「······驚いて、動転してしまった。」 「でも何でお前がアメリアさんの息子って知ったんだろうね。気になるから調べるよ。」 「そのあとの動きは何もねえのに今更だけど違和感がある。それも調べてほしい。」 梓さんを襲った後、勢いに任せていたとしてもこんなにも静かにしているのはおかしいと感じ始めた。それは立岡も同じだったらしく、1度深く頷いた。 「周りから崩していくつもりかもしれないね。中心を狙って失敗したから、次は周りからってね。」 「······気を付けろよ」 「お前もね。で、どこにチャカ隠してあんの?」 「俺にとっては大切なところ」 山奥まで車を走らせると廃れた教会に着いた。立岡は不思議そうにそれを眺めて、俺はさっさと車を降り中に入る。 「ここは?」 「昔、母親と日本に旅行した時に来た。」 母さんがあの事件で亡くなる1ヶ月程前だったと思う。 「ふぅん。だから大切ね」 「ここに隠してある。ここの神父も亡くなって、今はこんなにボロボロだから誰も来ない。」 「壊されたりしないの?」 「教会はなかなか壊されないって聞いた。本当かは知らないけどな。俺ならこんな神聖な場所を易々と壊せない。」 その割にここにチャカを隠しているんだから、矛盾しているとは思う。 「ここ、好きになりそう」 「······誰にも言うなよ。」 「言わないよ。あー、久しぶりに気持ちが楽になった気がする」 椅子の埃を払ってそこに腰を下ろした立岡は、ボーッと真正面を見る。 「俺の情報屋になった理由、話したっけ?」 「いや」 チャカを回収して立岡の傍に寄る。 「ずっと探してるんだ。母親を。」 「母親?」 「ああ。見つけ出して、殺すために。」 立岡から発されるオーラが異様で、咄嗟に手を伸ばし肩に触れた。 「ん?何?」 「······そんなに憎いなら止めはしないけど、お前自身がその感情に呑まれるなよ」 「ちょっと······難しくて何言ってるかわかんないや」 誤魔化すように笑う。俺にはそれが哀しく見えた。

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