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第59話

立岡を連れたまま一緒に本家に戻ると、立岡はすぐに親父の部屋に消えていった。 「あ、神崎おかえり。立岡は?」 「今親父の部屋に行った。」 「そう。俺梓君の護衛してくるから、後のことよろしく」 廊下でたまたま会った速水にそう言われて頷く。幹部室に入ると相馬と夏目が相良組の事が纏めてある資料を眺めていた。 煙草を吸いながら、俺も自分のデスクに置いてあった資料を眺める。 「臭い。窓開けて吸えよ」 「悪い」 相馬にそう言われて窓を開ける。ここの窓からは地下に繋がる建物が見えて、そう言えばあの女はどうなったんだろうと胸の中をモヤモヤとさせる。 「あの女、どうなった」 「まだ地下にいるよ。あ、お前には会わせないから」 「別に会いたくない」 「そういえば、神崎に会わせろって執拗く言ってたな。お前に惚れたとか?」 「そんなわけねえだろ。腐ってんのかお前」 煙を吐いて、火を消し席に座る。 「で?ちゃんと回収出来たの?」 「ああ。」 「いい加減どこに置いてあるのか教えてほしいね」 「嫌だ。絶対に教えない」 さっさと仕事を終わらせて、早く家に帰りたい。いつ抗争が始まるかはわからない。だから少しでも長く好きな相手に触れていたい。 「神崎ぃ」 そう思っていた時、部屋にやってきたのは立岡で、座っていた俺に後ろから覆い被さった。 「帰るから、送ってって」 「······重たい」 「お願いだってばぁ。俺だって付き合ったじゃん。ね?ちゃんと調べ物もするし······だから送ってってよぉ」 「わかったから」 立岡を剥がして夏目に送ってくると言うと、そのまま帰ればと言われて眉を寄せる。 「何で。仕事は」 「どうせ皆抗争の事で忙しいよ。他のことはしてる暇ないし、お前も準備終わったなら帰れば。俺も帰るつもりだし」 「······速水は?」 「あれは別だよ。若に梓君を見とけって命令されたんだもん」 「志乃って本当過保護だよねぇ」 背中にもたれ掛かる立岡を引き摺るようにして移動し、車に乗り込んだ。 「向かうはお前の家」 「は?帰るんじゃねえのかよ」 「冴島居るんでしょ?話あるから連れてって」 「話って何の」 「お前と冴島が付き合った経緯とか?」 カッと体が一気に熱くなった。 何でお前には全てが筒抜けなんだ。

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