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第60話

「な、んで知って······」 「あ、合ってた?自信なかったからかまかけた。冴島がお前の家に出入りしてる情報が入ってたからさ」 「っ、それも誰にも言うな」 「言わないよ。」 動揺を見せてしまったことに、味方であるにも関わらず焦った。こういうわかりやすい所を治さないといけないな。 「冴島に会ったら怒られるかもしれないから、そうなったら庇ってね」 「あいつが怒ることなんて滅多にねえだろ」 「いや、お前が知らないだけ。あいつは高校の時も怒ったら面倒で······。怪我したくないなら怒らせない方がいいよ」 俺より先に秀に出会っているんだから当たり前だけれど、俺の知らない秀を立岡が知っている事に少し嫉妬してしまう。 「俺高校の時あいつのせいで骨折した」 「······何で」 「机投げてきたんだよ。怖かった」 怒り方が激しいタイプなのか。きっと怒りの頂点に達するまでは長くて、我慢出来なくなった時に爆発してしまうんだと思う。 「あ、煙草吸いたい。1本ちょうだい」 「ん」 立岡といる時間は苦じゃない。 無駄に詮索はしてこないし······というか、立岡が勝手に俺の情報を収集していて、俺の事は殆ど全て知っているから、改めて聞いてくることなんてないし。 「ねえ今日このまま泊めてよ」 「帰れよ。仕事あるだろ」 「あるけどぉ!たまには誰かと酒飲みたいもん」 「······秀が良いって言ったらな」 「秀って呼んでるんだー!!わぁ、本当に付き合ってるんだね?やっば、お前らが?1番無さそうなのに」 そう言われてカチンときた。 1番無さそうって何だ。 「だってお前詮索されるの嫌いじゃん。あいつは詮索したがりだよ」 「······でも、そのおかげで楽になった所もある」 「無理にでもお前の話を聞いた方が良かったの?俺もそうしたらもっとお前と仲良くなれるの?」 「なれない。同じようなのが2人もいるのは鬱陶しい」 家に着いて車を停め降りると「えー」と言いながら一緒に降りてくる。 「俺が冴島の立場になりたかったなぁ。お前のこともっと知れるでしょ?」 「それは無いと思うけどな。」 家に着いて玄関を開けると「おかえりー」と秀の声が聞こえてくる。 それを聞くと少し嬉しくなって「ただいま」といつの間にか口から言葉が落ちていた。

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