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第61話
「彩葉、今日も早かったね······おい立岡、何でお前がいるの」
「仕事の付き合い」
さっきは秀に用事があると言ったくせに。あれは嘘だったらしい。無遠慮にソファに座って「疲れたぁ」なんて言葉を吐く。
「彩葉、何で連れて帰ってきたの?」
「······今日は帰りたくないらしい」
「何それ。泊まる気?······俺が言えることじゃないけど嫌だな」
「でも······今日、仕事で付き合ってもらった。蔑ろにはできない」
そう言うと渋々頷いた秀が俺の手を引いてキッチンに連れて行く。
「何だ」
「どうせ立岡は知ってるんでしょ。」
「ああ、知ってた。」
というか、正直に言えば俺がバラしてしまったんだけど。
「んっ、ぁ、秀······っ」
「ちょっとだけ」
キスされて、壁に押し付けられる。
舌を絡めると厭らしい水音が鳴った。
「っは、おい、もういいだろっ」
「······うん、ごめんね。今日は触れないって思ったらムカついちゃって」
苦笑を零す秀の髪をわしゃわしゃと撫でて、リビングに戻る。
「立岡」
「······ん」
ソファに座っていた立岡は、いつの間にか横になって目を閉じている。
「寝るのか?」
「······眠たい。最近、寝れてなくて」
「ベッド使えば」
「いい。」
それだけ話すとすぐに眠ってしまった。
風邪をひかないように掛け布団を掛けてやって、それからテーブルの席につく。
「今日は何の仕事だったの?」
「チャカ回収しただけだ。立岡について来てもらった。1人での行動は禁止だって言われてな」
「それで、立岡?他の人は?」
「他の仕事があったし、前も話したけど、気楽で居れるのは立岡だからな。」
「それでも、あいつはやめてほしい」
この間は肯定的だったのに、今日は何故か否定的だ。
立岡は俺にとっては良い奴だから、否定的になる意味がわからなくて首を傾げる。
「立岡は良い奴だ。俺の頼んだ仕事はすぐにしてくれるし、詮索もしてこない。なのに、何が嫌なんだ」
「それだよ。君にとってプラスになるから、必要以上に仲良く見えて······それに、君と立岡は真反対だから、変に影響を受けそうで嫌だ。」
「ガキじゃねえんだ。影響なんて受けるならとっくに受けてる。難しことを考えるなよ、面倒くせぇ」
煙草を吸って秀を睨んだ。
そもそも年下にそんな心配をされる事に嫌気がさす。それに、いくら恋人でも友人や仕事の仲間関係をとやかく言われる筋合いは無い。
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