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第62話
「俺の言う事、聞いてくれないんだね?」
「聞かない。それを聞いて俺にメリットがあるか?いちいちそうやって考えて関係を持ちたくない。」
席を立って服を脱ぐ。スーツを着ているのは疲れるな。
「わかった。それなら俺はもう何も言わないよ。何があっても君の自業自得だ。」
「うるせえな、わざわざそうやって人をイラつかせることを言うな。」
「君もそうだろ。」
「······うぜえ」
スーツをハンガーに掛けて風呂に入ろうと着替えを持って風呂場に行く。
「立岡には余計な事を言うな」
「さっきの俺の言葉が余計な事だと思うの?」
「ああそうだ。」
リビングのドアを閉めてさっさと風呂に入った。ものすごく気分が悪い。あいつはどういうつもりで否定的な言葉を言ったのかは知らないが、俺にだって考えがある。
風呂から上がると立岡は起きていて、秀と2人で話をしていた。
「お前が出ていけばいいじゃん。俺は神崎と話すのが好きなんだもん。お前にどうこう言われたくないね。ね、神崎」
「······秀、余計な事を言うなって言っただろ」
俺に気づいた秀は、俺の言葉を聞いて溜息を吐いた。
「彩葉は立岡の事を知らないでしょ。」
「だから何だ。知らなくたって付き合える。現に今までもそうだった。」
「······ねえ、今のこのタイミングで君と喧嘩をしたくない。わかってよ」
「俺の友人関係をとやかく言われる覚えはない。」
あまりの執拗さに腹が立って、立岡の腕を掴む。
「何?どうしたの?」
「お前の家に行く。今日は秀の頭がおかしい」
「えー、家に帰るの?······まあ、いいけどさぁ。」
「彩葉!いい加減にしろ!」
大きな声を出した秀を睨み付ける。いい加減にするのはお前の方だ。
「黙れ。俺は俺のしたいようにする。」
喧嘩がしたいわけじゃない。
自分の行動を誰かに制限されたくないだけ。
「行くなら行こうよ。髪濡れたままだけどもういい?」
「いい、面倒臭い」
パーカーと財布に鍵だけを持って家を出る。
秀は相変わらず溜息を吐いていたけど、そうしたいのは俺の方だと、車を運転しながら煙草を吸い、そう思っていた。
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