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第67話
リビングのソファに座り、不眠症について調べた。
「······難しい」
内容を読んでも俺には解決策が分からないからどうにもできない。
兎に角置きっぱなしだった空き缶を片付けることにして、それからソファに横になった。
濡れたままだった髪はいつの間にか乾いていて、相変わらずユラユラと緩くウェーブがかかっている。母さんに似た髪質で柔らかいそれは、頬にかかると擽ったい。
目を閉じるといつの間にか深い眠りに落ちていた。けれど、突然人の気配がしてバッと目を開けた。
「あ、ごめん。起こした」
すぐそばに立岡がいて、時計を確認すると、立岡が眠ってからまだ1時間も経っていなかった。
「······寝れねえか?」
「ううん。すごく寝た。」
「まだ朝じゃねえよ。」
「まあ、そうなんだけど······。」
起き上がって、困った顔をする立岡の背中を押して寝室に戻らせる。
今度は俺も一緒にベッドに入って、寝転んだ立岡の腹をもう1度ポンポンと叩いた。
「······冴島と付き合ってるのに、一緒に寝ていいの?」
「今は関係ないだろ。お前にちゃんと休んでもらわないと、仕事に響く」
「あはは、俺は大丈夫なのに。ていうか風呂に入るの忘れた。朝入る」
「そうしろ」
暫くグダグダと話していたけれど、気が付けば立岡はまた目を閉じて、ゆったりとした呼吸を繰り返している。どうやらこうしていれば眠れるようだ。
誰かが立岡を理解して、こうなった原因を取り除いてやれば、立岡ももっと楽に生きられるはずだ。早くそういう相手が現れたらいいのに。
「ん······ぅ、はぁ······」
少しすると立岡が魘され始めて、眉間に皺を寄せる。どうしてやればいいのかも分からず、ただ体を撫でてやったり、根拠の無い「大丈夫」を繰り返すしかなかった。
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